折り詰め

2017.03.25.Sat.11:01

近所の中華屋でラーメンを食ったんだが、金を払おうとしたら、店主がいらないと言うんだ。 

「今日でお店終わり。あなたが最後のお客さん。ひいきにしてくれてありがとう。これ、おみやげ」と、折詰めを二つくれた。 

俺は何と言っていいかわかんなかったけど「とても残念です。おみやげ、ありがたく頂戴します。お疲れさまでした」と挨拶して店を出たんだ。 

折詰めの中を見たら、餃子やら春巻やら唐揚げやらが、みっしりと詰まってる。ちょっと一人じゃ食べきれないボリューム。 

面白い体験だな。得しちゃったな。と、楽しくなってさ。帰り道、友人に電話して、経緯を話してから「今、俺んとこに来たら、中華オードブルがたらふく食えるぜ」と誘ったんだよ。 

すると、友人は変な事を言うんだ。 

「その折詰めの中身、食ったのか?」 

「食ってないよ」 

「いいか、絶対食うな。それから、絶対アパートに戻るな。そうだな、駅前のコンビニに行け。車で迎えに行ってやるから」 

「どういう事が全然わかんないんだけど」 

「説明は後だ。人のいるところが安全だ。コンビニに着いたら電話くれ」 

とにかく俺はコンビニに向かったよ。で、友人に電話した。「着いたよ」 

「こっちももうすぐ着く。誰かに後を付けられたりしてないか」 

「えーと、お前大丈夫か?」 

「それはこっちの台詞だな」 

それから、友人と連絡が取れなくなった。携帯がつながらない。 

小一時間、コンビニで待ってたけど、友人は現れない。 

友人が言った、絶対アパートに戻るな、というのが、何故か頭に残ってたから、ネットカフェで朝まで過ごし、始発で実家に帰った。 

いまも実家でゴロゴロしてる。 

他の友人に尋ねても、そいつとは連絡が取れないそうだ。 

そろそろ学校も始まるし、友人の消息も気になる。 

折詰めはコンビニのゴミ箱に捨てた。

以前、中華屋で折詰めを貰ったものです。 

九月も中頃を過ぎて、さすがに実家に居づらくなったのでアパートに戻ってみた。 

晩飯にコンビニ弁当を食っていると、お隣の人が来たんだ。ちょっといいかな、って感じて。 

「もう、大丈夫なのか」って聞かれたんで、すごくびっくりした。 

え?なんで知ってんの? 

でも、お隣の人が続けた話にもっとびっくりした。 

「夜中にガラの悪い男が、あんたの部屋のドアやら壁やらをガンガン蹴ってたんだよ。

借金かなんかでヤクザとトラブったのかと思った。しばらくあんたの顔も見なかったし。でも、あんたも戻ってきたんだしね。詮索はしないよ」 

帰ろうとするお隣の人を引き止めて聞いた。 

「それはいつ頃のことですか」 

「八月の終わり頃と、先週くらいかな。先週のは、しつこく蹴ってたから、警察呼ぶぞ、っていってやったら、すぐ引き上げたみたいだな。……もしかして、知らなかった?」 

俺が半笑いな感じで頷いたら、お隣の人は無言で出ていった。 

俺も即、部屋をでた。 

それから、カプセルホテルとかを転々としてる。実家にまた戻るのいいんだろうけど、よくわからない災いをもたらしそうで、正直怖い。 

とにかく、消息不明の友人に話を聞くのが解決の近道と、学校の知人と連絡を取り合ってるが、いまだ音信不通。 

どうしよう。

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消息不明の知人が、自殺していたことが判明しました。 

俺は学校を辞めました。 

アパートも引き払いました。 

多分、これで終わりになるでしょう。

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本当の最後として。 

俺が消息不明の友人と何とか連絡を取ろうとしていた時、頼りにしていた奴がいた。

そいつは、友人と古くからの付き合いで、そいつならば、友人の居場所の見当もつくんじゃないか、俺はそう思ってた。 

アパートから二度目の逃亡で、カプセルホテルに滞在中、そいつから携帯に電話があった。 

「お前に嘘をついていたことを、まずは謝る。

実は俺はお前から友人のことを問われた時には、友人が自殺したことを知っていた。車庫で首を吊っていたそうだ。 

通夜の晩、俺は親御さんから呼ばれて、別室で話をした。 

親御さんは、自殺する理由がどうしてもわからない、とおっしゃる。俺も、まったく思い当たることがない、と答えた。

すると親御さんは携帯電話を俺に見せた。友人の携帯電話だ。 

握りしめたまま息絶えていたそうだ。 

遺書らしきものなかった。もしかすると、この携帯になにかメッセージがあるのでないか。

そう親御さんは考えて、俺に確認してくれとおっしゃった。 

俺はちょっと奇妙な感じがしたが、親御さんに機能と操作を説明しつつ、なかを見た。 

録音もなし、メモもなし。 

次に発信履歴を見た。そこには、●●●という名前がずらっと並んでいた。全部不在だった。 

友人は、多分、自殺する直前まで●●●に電話を掛け続けていたんだろう。履歴のページがその名前で埋め尽くすまで。

さらに、着信履歴を見た。 

お前の名前があった。 

俺は正直に、親御さんに説明した。 

お前から友人に電話があり、しばらく会話した後、友人は●●●に電話を何度も掛けたがつながらなかった。

そして、友人は間違いを犯した。その後、お前が友人に何度か電話を掛けた。とね。 

親御さんに、お前のことと、●●●について聞かれた。俺は知っていることを全部教えた。

●●●は何のことかわからなかったから、わからない、と答えた…」 

コンビニで待ちぼうけをくったあの晩に、すでに友人は自殺していたんだ。 

●●●といえば、あの中華屋の店の名前。 

そいつの話はまだ続いたが、もうどうでもよくなった。 

ただ、この街にいるのは良くない。災いがやってくる。 

だから、逃げることにしたんだ。 

さようなら

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