隣の女子大生

2017.04.23.Sun.21:18

貧相なアパートに暮らす男。 

彼の住むアパートは、

築30年の6畳一間で、

おんぼろアパートという言葉が

ぴったりの建物であった。

コンビニからも遠く、

駅から自転車で30分もかかる物件だったが、

そのぶん家賃はずいぶんと安かった。

それでも彼は、

そのアパートになにかあたたかいものを感じ、

とても気に入っていた。

そして、それ以上に嬉しかったのは、

隣の部屋に住む女子大生が美人で、

とても親切だったことである。

彼の唯一の楽しみは、

彼女と語らうひとときだった。

顔を合わせるといつも挨拶してくれるし、

付近のコインランドリーや

おいしい定食屋などいろいろ教えてくれたのだ。

そうするうちに彼は、

いつしかその女子大生に

恋心を抱くようになっていた。

彼女のことを考えると、

胸が締め付けられて苦しくなるほどであった。

彼は、いつの日か彼女に告白しようと心に誓うのだが、

その女子大生にも嫌なところがたった一つだけあった。

それは、彼女が幽霊の話をよくするところであった。

「このアパートには霊がいる」

「一階で霊の祟りで死んだ人がいる」

「昨日、金縛りにあった」

など、廊下や階段での立ち話でも、

必ずこういう話をするのだ。

「なんで、この子はこんな話ばかりするのかな・・・」

元来臆病な彼は、

そういう話を聞くのもダメで、

そのときばかりは閉口してしまうのだった。

ある夜のこと。

彼が寝ていると何者かが

布団の上に覆いかぶさってきた。

そして、彼の全身に重みをかけて、

首を締めつけてくる。

「彼女が言っていた霊現象って、このことか・・・」

恐怖の中で、彼はそいつの手をなんとか引き離し、

体をはねのけ、電気をつけたのだ。

すると、部屋の中には誰もいない。

乱れた布団があるのみである。

「これは、いったい何なんだ。

俺の幻覚なのか?

彼女が霊の話をするので、

ついに本物の霊が出たのか・・・」

不審に思った彼は大屋さんのところへ行き、

この体験を話したところ、

大屋さんは険しい顔でこういった。

「あのアパートには、

あなたしか住んでいないんですけど…」

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