覗き

2017.04.24.Mon.11:05

俺が中学生の頃の話。 

夜9時ごろ、自宅のトイレで大をしてたのね。

ふっと横の窓を見上げると、変な顔があった。 

その窓は、家の外に直接面している窓。 

ガラスに顔をべったりとくっつけている感じで、

鼻や頬が押し付けられて平べったくなってた。 

一瞬、髪の毛が逆立ったんだけど、

すぐに「ああ、これはのぞきか?」と思い直した。

当時、姉が高校生だったので、

トイレをのぞく奴がいても不思議はない。 

外に面したトイレの窓なので、当然すりガラス。

だから中に入っている人間が男なのか女なのかよくわからず、

ぴったり顔をつけてのぞこうとしたのだと感じた。 

それなら怒鳴りつけるなり何なりすればよかったのだろうが、

一瞬腰を抜かしそうになった後だったので、

なんだかちょっと行動力がなくなっていて、

そのまま、そーっとトイレを出た。 

俺が振り返っても動き出しても、

その「顔」はうろたえる様子もなく、

そのままトイレの中を必死でのぞき続けているようだった。 

ぴったりガラスに押しつけられているので、

異様に大きな顔にも見えた。

太った男のようだった。 

トイレの外に出てから、

このままにしといたら姉貴がかわいそうだなぁと思い直した。 

どんな奴なのか顔だけでも見といてやろうと、

家族には何も言わずにサンダルを履いて外に出て、

家の裏に回った。 

路地に出てトイレの窓のところを見た。

人影はない。

そりゃもう逃げてるわな。

ちょっと苦笑しかけて、

すぐにあることに気づいて俺はもう一度ゾッとした。 

トイレの窓の外には、ドロボウ除けのステンレスの

面格子が取り付けられていたんだ。 

面格子と窓ガラスとの距離は5センチ足らず。

とてもじゃないが人間が頭を突っ込める隙間はない。 

俺はあわてて家の中に戻り、

その夜は布団をかぶって寝た。

あのガラスに押し付けられた肉厚な顔のイメージが、

しばらく頭から離れなかった。

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