ロールプレイング

2017.04.24.Mon.16:05

ある小学5年生の男の子が、

持病が悪化したため、

1ヶ月間入院する事になった。 

病室は4人部屋で、

その男の子の他に、

おばあちゃんとおじいちゃん、

もう一人は同い年くらいの女の子だった。

男の子は人見知りが激しい上にとても照れ屋で、

なかなかその同室の人たちと仲良くなれず、

一人で勉強しているかゲームボーイで遊んでいた。

家から持ってきたゲームは、

すでに一度クリアしたソフトだったが、

ヒマなので毎日遊んでいた。

入院して一週間が立った頃、

ゲームをやっていると同室の女の子が、

じーっとこちらを見ている事に気づいた。

目が合うと女の子は慌てて逸らす。

「もしかしてやってみたいのかな?」

そう思った男の子は

「良かったらコレ借そうか?」と聞いてみた。

すると女の子は目を輝かせて、

とても嬉しそうな表情を浮かべ、

「いいの?」と答えた。

男の子はゲームを快く貸してあげた。

しかし案の定、女の子は操作が分からず、

男の子が操作を教えながら、

一緒にゲームを進めることにした。

そのゲームは仲間(パーティー)を

つくる設定になっていた。

そこで、主人公に「たかし(男の子の名前)」、

仲間に「ゆうこ(彼女の名前)」。

他の仲間には、

それぞれ同室のおばあちゃんとおじいちゃんの

名前をつけた。

それからどんどんその女の子と仲良くなり、

二人でゲームボーイをやるだけではなく、

色々な話をするようになった。

学校の事、家族の事、好きな音楽の事、

近くに迫った夏休みの事…

それからの時間はあっという間であった。

しかし、すぐに男の子が退院する時がやってきた。

看護師や同室のおばあちゃんやおじいちゃんたちが

口々に「おめでとう」と言ってくれる中、

彼女だけが泣いていた。

それを見て、男の子も泣きそうになった。

しかし、グッと堪えて

「オマエが退院するまでコレ借してやるよ。

退院したら連絡くれよな」と言って、

男の子はゲームを置いていった。

それから何度もお見舞いに行こうと思ったが、

いざ行こうと思うとなにか照れくさくて行けなかった。

連絡がないまま1年半が過ぎ、

男の子も小学校を卒業する頃になった。

せめて卒業前にもう1度会っておきたいと思い、

意を決してお見舞に行く事にした。

しかし病室に行ったが、

彼女はいなかった。

病室の入口の名前欄にもない。

もうとっくに退院したのかな?

そう思い、ナースセンターで聞いてみる事にした。

「ゆうこちゃんは遠い所に行ったよ」

などとうまくはぐらかされたが、

彼ももう小学6年生。大体のことは把握できた。

その場の空気や、

後ろの看護師さんが泣き出したのを見ても明らかだった。

男の子がショックで呆然としてる中、

その看護婦さんが、

「ああ、そういえばゆうこちゃんから、

たかし君が来たら渡しといてって言われた物があるのよ」

と言ってそれを渡してくれた。

借してあげたゲームだった。

男の子はそれを受けとって家に帰ると、

夕飯も食べずに暗い自分の部屋でゲームの電源を入れた。

懐かしいあのオープニング音楽。

それと一緒にでてくるロード画面。

一つは彼女と男の子が一緒にプレイしたデータ。

あの時からほとんど変わっていない。

懐かしさと悲しさで胸がいっぱいになった。

その時、見た事のない一つのデータに気づいた。

やたらとレベルの低いデータだった。

始めてすぐに飽きたか?

と思い、そのデータをロードしてみた。

パーティー四人の名前を読んで彼は声を失った…

「かんごふ」

「さんにこ」

「ろされる」

「たすけて」

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