DVD

2017.04.25.Tue.11:07

ある男の会社の同僚が亡くなった。 

フリークライミングが趣味のKという奴で、

男は彼ととても仲がよく、

家族ぐるみ(男の方は独身だが)での

付き合いをしていた。

Kは趣味であるフリークライミングへの

入れ込み方が本格的で、

休みがあればあっちの山、

こっちの崖へと常に出かけていた。

亡くなる半年ほど前、

急にKが男に頼みがあると言ってきた。

「なあ、俺がもし死んだときのために、

ビデオを撮っておいて欲しいんだ」

趣味が趣味だけに、

いつ命を落とすかもわからないので、

あらかじめビデオメッセージを撮っておいて、

万が一の際にはそれを家族に見せてほしい、

ということだった。

男は、そんなに危険なら家族もいるんだからやめろと言ったが、

クライミングをやめることだけは絶対に考えられない、

とKはきっぱり言った。

いかにもKらしいなと思った男は、

撮影を引き受けることにした。

Kの家で撮影したら家族にバレてしまうので、

男の部屋で撮ることになった。

部屋の白い壁をバックに、

ソファーに座ったKが喋り始める。

「えー、Kです。このビデオを見てるということは、

僕は死んでしまったということになります。

○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、

今まで本当にありがとう。

僕の勝手な趣味で、

みんなに迷惑をかけて本当に申し訳ないと思っています。

僕を育ててくれたお父さん、お母さん、

それに友人のみんな、

僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、

どうか悲しまないでください。

僕は天国で楽しくやっています。

皆さんと会えないことは残念ですが、

天国から見守っています。

××(娘の名前)、お父さんはずっと

お空の上から見ています。だから泣かないで、

笑って見送ってください。では、さようなら」

もちろん男がこれを撮ったとき、

Kは生きていたわけだが、

それから半年後、Kは本当に死んでしまった。

クライミング中の滑落による事故死で、

クライミング仲間によると、

通常なら万が一落ちた場合でも大丈夫なように、

下には安全マットを敷いて登るのだが、

このときは、その落下予想地点から

大きく外れて落下したため、

事故を防ぎきれなかったのだという。

通夜、告別式ともに悲壮なものだった。

泣き叫ぶKの奥さんと娘。

男も信じられない思いだった。

「まさかあのKが。」

一週間が過ぎた頃、

男は例のビデオをKの家族に見せることにした。

さすがに落ち着きを取り戻してきていたKの家族は、

男がKのメッセージビデオがあると言ったら、

是非見せて欲しいと言って来たので、

ちょうど初七日の法要があるときに、

親族の前で見せることになったのだった。

男がDVDを取り出した時点で、

すでに泣き始めている親族。

「これも供養になりますから、

是非、見てあげてください」

とDVDをセットし、再生した。

ヴーーーという音とともに、

真っ暗な画面が10秒ほど続いた。

(あれ?撮影に失敗していたのか?)

と思った瞬間、

真っ暗な中に突然Kの姿が浮かび上がり、

喋り始めた。

(…あれ、俺の部屋で撮ったはずなんだが、

こんなに暗かったか?)

「えー、Kです。

このビデオを…るということは、

僕は…んでしまっ…いう…ります。

○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、

今まで本…ありが…」

Kが喋る声に混ざって、

さっきからずっと鳴り続けている、

ヴーーーーーーという雑音がひどくて、

声が聞き取りにくい。

「僕を育ててくれたお父さん、お母さん、

それに友人のみんな、

僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、

どうか悲しまないでください。

僕はズヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア××(娘の名前)、

お父さん死んじゃっヴァアアアアアアアアアアアアア死にたくない!

死にズヴァアアアアアアアにたくないよおおおおヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、ザッ」

…それを見た一同は背筋が凍った。

最後の方は雑音でほとんど聞き取れなかったが、

Kの台詞は明らかに撮影時とは違う、

断末魔の叫びのような言葉に変わっていた。

そしてKが喋り終わる瞬間、 

暗闇の端から何かがKの腕を掴んで

引っ張っていくのがはっきりと見えたのだ。

これを見た親族は泣き叫び、

Kの奥さんはなんて物を見せるんだと男に掴みかかり、

Kの父親は男を殴りつけた。

奥さんの弟が、

K兄さんはいたずらでこういうものを撮るような人じゃない、

となだめたためにその場は収まったが、

男は土下座し、すぐにこのDVDは処分します、

と言ってみんなに謝るしかなかった。

翌日、男がDVDを近所の寺に持って行くと、

神主がDVDの入った紙袋を見るや否や、

「あ、それはうちでは無理です」

と言われてしまった。

代わりに「ここなら浄霊してくれる」という場所を教えてもらい、

行ってみたが、そこでも

「えらいとんでもないものを持ってきたね」

と言われた。

そこの神主によると、

Kはビデオを撮った時点で完全に地獄に引っ張り込まれており、

なぜ半年も永らえたのかわからないという。

本来ならあの直後に事故に遭って、

死んでいたはずだと言われたのだ…。

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