首のない警官

2017.05.20.Sat.11:15

私はある離島の駐在所に、勤務しております。

この駐在所に来る前は、派出所に勤務しておりました。

田舎に住む事になりましたが、私は「不運だった」と思っていません。

「職住接近だし、3直交代の不規則な生活をしなくて済む」と、考えたからです。

しかし、この駐在所には問題がありました。

首が無い警官の幽霊が出るのです。

私も最初は驚きました。でもその幽霊は、それほど危険な存在に思えません。私には無関心のようですし・・・。

だから私は、段々と幽霊が現れる生活に、慣れていったのです。

しかし、私は幽霊の正体が気になっていました。

それで私は寄り合いの度に、それとなく駐在所の幽霊について聞き出そうとしたのです。

ところが住民達は、いつも「気にしない方がいいよ」と話をはぐらかし、私に何も教えてくれません。

その度に私は、「よほど言いたくない事なのかも・・・」と思い、何も聞けませんでした。

住民との関係を、悪くしたくありませんでしたから・・・。

そんなある日、私はその幽霊に、ついつい話しかけてしまったのです。

「あんた、いい男だね」と。

別に、この言葉に深い意味はありません。

ただ、いつも現れる幽霊とコミュニケーションを取ろうとし、ちょっとおだてただけです。

しかし私の言葉を聞き、彼は恐ろしい見幕でにじり寄ってきました。

「俺の顔が見えるのか」と・・・。

あんなに恐ろしい威圧感を受けたのは、初めてです。

私は恐ろしさのあまり、すぐにその場から逃げ出しました。

そして村長の家へ行き、その出来事を話したのです。

その時の村長は、険しい表情を浮かべ、頑なに口をつぐんでいました。

それでも私は、駐在所の幽霊について、強い口調で尋ねたのです。

すると村長は、古ぼけた封筒を私に手渡しながら、こう言いました。

「この封筒の中を見たら、あんたは間違いなく死ぬ」

「その覚悟があるんなら、見てみなさい」

私が封筒を手に取り、中を確認しようとしたその時です。

突然に玄関のドアを、誰かが叩く音がしました。

私と村長が玄関まで行くと、ドア開かれておりましたが誰も居ません。

「もしかしたら、あの幽霊なのか?」

「あの幽霊が居る気配がするし・・・」

「でも、どこにも姿が見えないな」

私がそう思いながら、恐る恐る辺りを見回していた時です。

突如、私の背中に悪寒が走ったかと思うと、そのまま私は気を失ってしまいました。

それからどの位の時間が経ったのでしょうか。

意識が戻った時は、何と私の体が金縛り状態になっていたのです。

そして「見たな、見たな・・・」と、あの幽霊が私に呟き続けていました。

それで、驚いた私は思わず心の中で叫んだのです。

「一体お前は、何をしたいんだ!」

「俺をどうする気だ!」その時、幽霊はこう答えました。

「一人になりたい」

「幸せに辿り着くまで、考え続けたいんだ」

彼はそう言い残し、自分の家へ帰ったようでした。

あの駐在所に・・・。

その後、私は別の建物を駐在所代わりにし出したのです。

そんな私に、村長は駐在所の幽霊について、こう教えてくれました。

「あのお巡りさんは、駐在所で火の不始末から、火事を起こしたんじゃ」

「火はすぐに消えたが、お巡りさんは大火傷をした」

「それ以来あのお巡りさんは、人を避けるようになってな」

「火傷のせいで、えらく人相が悪くなったから、しょうがないじゃろう」

「だが島のみんなは、そんな駐在さんはいらんと怒ってな」

「駐在さんは、みんなの冷たい仕打ちのせいか、自殺したんじゃ」

「駐在さんの奥さんも、その後、ここを去っていった」

「あの封筒にはな」

「駐在さんの、顔写真が入っているんじゃよ」

「もうこれ以上は、何も知らん方がいい」

私は今でも、「彼が早く幸せに辿り着くよう」祈っています。

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