深夜の峠道で・・・

2017.05.27.Sat.16:15

田中(仮名)は深夜車で帰宅する途中だった。

自宅は職場から山を隔てた所にあり 

そのため、急でカーブも多い山道を通らねばならなかった。 

田中はいつものように峠に差し掛かると 

道から少しそれた茂みの中にテールランプが光るのを見た。 

事故車かと思ったがそうじゃないみたいだった。 

田中は何か嫌な予感がしてきた。 

それというのも、この山道は自殺や事故が多く、 

ここで幽霊を見た、という人も少なからずいたからだ。 

田中はそのまま車を走らせた。 

だんだんと停車した車が近づいてくる。 

怖くて仕方ないのだが、何故か目が釘付けになって 

視線を逸らせなかった。

田中は少しスピードを上げた。 

そして、車の横を通過した時、 

「ベタベタベタベタベタッ」 

スモークガラスに人の手がいくつも張り付いた。 

田中は危うくハンドル操作を誤るところだった。 

あまりの恐怖に猛スピード飛ばした。 

バックミラーすら怖くて見れなかった。 

田中は次の朝、警察の知り合いから 

電話がかかってきた。 

「お前の帰り道の山道、あそこでさ、 

夕べ自殺があったんだよ。それも3人同時、車内に排気ガス入れてさ。 

お前何か見てねえ?」

田中はまさかと思いつつ 

何時頃のことか、と訊いた。 

知り合いは 

「ああ、死亡推定時刻は…午前0時から2,3時間てとこだな。 

え?お前何か見たの?」 

と訊いた。 

田中は何も見ていない、とだけ答えると受話器を置いた。 

その道を通ったのはちょうどその時間だった。 

あの手が死の苦しみに悶える生きた人の手でも 

…そうでなくても、どちらにしろ 

恐ろしいものを見てしまったのには変わりなかった―――― 

田中はその日も遅くなった。 

またあの道を通っている。 

そしてあの峠に差し掛かった。 

…また車がある、 

…あの車だ、 

…いやだ、もうやめてくれ 

田中は・・・

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