FC2ブログ

ノイローゼの原因

2017.09.06.Wed.16:15

一人暮らしのおばあさんが、マンションの一室で孤独死した。 

死因は、ノイローゼが昂じて、弱った心臓が耐え切れなくなったことによる心臓発作である。 

彼女を知る人は、常になにかにひどく怯えた様子だったという。

後に真相が明らかになった。

証言したのは、ごくたまに泊まりに来ていた息子夫婦であった。

信心深いおばあさんは、亡くなった夫の仏壇を部屋に置き、毎朝欠かさず供物、水を捧げていた。 

たまたま小用にたったその日の早朝、息子はおばあさんの不審な行動を目にした。 

おばあさんは仏壇の供物を代えようとしていたのだが、扉を開けるのをためらい、何度も逡巡しているようだった。

そして意を決して中を覗き込み、 

「ああ、やっぱり・・・」と言って悄然とし、その気の落とし方は尋常ではなかった。

息子は気になって眠れず、ついにその晩問いただした。 

おばあさんは目を泳がせ知らないと白をきっていたが、息子の真剣さにほだされついに語りだした。 

話によると、ここ最近仏壇を開けると、位牌がそっぽ向いているという。

最初は気付かなかったが、位牌が日に日に斜めになっていくので、恐ろしくて眠れないというのだ。

しかも、朝になるたびにきちんと前を向けた位牌が、翌朝になるとまた斜めになっている。 

「おじいさんに、罰をあてられるようなことしたんかな。

 でも、どなに拝んで供物を代えてもおさまらん。

 今に完全に裏むいたら、あたしゃ死ぬんじゃろう」 

そう言って泣くおばあさんに、息子はそんな馬鹿なと思ったが、

翌朝確かめると、やはり位牌が斜めになっていた。

「おかあさん、こりゃ本当の祟りかもしれんけん。祓ってもらわにゃいかんぞね」 

息子はそう言ってお祓いさせようとしたが、

「おじいさんがお迎えにくるんじゃしょうがないけん。祓ったらかわいそうじゃ」と言ってきかない。 

とうとう諦めて帰ったら、結局とり殺されてしまった。

「きっと位牌が完全に裏向いてもうたんやな」と言って息子は悔やんでいたという。

それを聞いたおじいさんの古い友達が、そりゃおかしい、信じられんと言い出した。 

ものすごく仲の良い夫婦で、妻をとり殺すなんてことするはずがない、と言ってきかない。 

どうしても一度確かめさせてくれと言って、おばあさんの死んだ部屋に一人で泊り込んでしまった。 

と言ったものの、さすがに気味悪く寝付かれなかったが、うとうとと眠り込んでしまい気がつくと朝。 

はっと仏壇を開けると、位牌は見事に裏返しになっていた。

背筋がぞっとしたが、

無二の親友だった俺すら殺そうとするのか、どうせ老い先短い命、こうなったら何がなんでも正体つきとめる。 

と決心し、ようし今夜は一睡もするものかと気をはって起きていた。

真夜中3時ごろ、カタカタと仏壇の中から音がする。 

ぎょっとして、しかし勇気を振り絞って扉を開けてみた。 

カタカタ・・・

カタカタ・・・

位牌がじりじりと動いているではないか!

恐ろしささに心臓が止まりそうになったが、気を落ち着けてじっと動く位牌を見ていた男は、妙なことに気付いた。

仏壇全体が微振動しているようなのだ。 

「こりゃいったい?」 

仏壇は台の上に載せて、ぴったりと壁にくっつけて置かれている。

もしや。

男は仏壇を壁から離した。 

その途端、位牌はぴたりと動かなくなった。 

「この壁の向こうになんかあるぞ」 

台と仏壇を除け壁に耳を当てると、ごぉーという音がして壁が震えている。 

水を上げている音だった。

このマンションでは深夜、屋上まで水を汲み上げていた。 

配管がちょうど仏壇の後ろの壁だったために、振動によって位牌が動いていたのだ。 

不幸なことに、位牌の作りが粗く安定していなかった為、片側に回転していたのだった。 

とにかく幽霊の仕業ではないとわかったものの、やりきれない思いであった。

件の仏壇は息子夫妻の家にある。

今のところ位牌が回転することはないそうだ。

関連記事
コメント

管理者のみに表示