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ドイツ将校

2017.09.08.Fri.16:15

俺の嫁の爺さんから聴いた話・・・

時は1944年、11歳になるP君はポーランドに住んでいた。 

当時はナチに占領されていた事もあって、生活は苦しかったらしい。 

無論P君の家も(ユダヤ人ではなかった)まともな食事を食べられる余裕すらなかった。 

P君の家はユダヤ人収容所が近く、村にはドイツ兵であふれていたそうだ。

ある日、P君が配達の仕事を終え(親の仕事の手伝い)、家へ帰る途中の事。 

ユダヤ人収容所がある森の付近の道を、自転車で走っていると、前からドイツ軍の車が走ってきた。

P君は即座に自転車から降りて端に寄った。 

しかし車は通り過ぎず、P君の前で止まり、中からドイツの将校がおりてきた。 

しばらくその将校はP君の顔を見つめて、しきりに頷いていたらしい。 

ふいにその将校はニッコリとほほ笑みながら、ポケットからチョコを差し出した。 

P君は受け取って「ありがとう」と言った。

将校は、

「これから毎日、この時間に私の話相手になってくれたら、その分だけチョコをあげよう」

と、ほほ笑みながら言ったそうだ。 

P君は頷き、「わかりました!」と言った。

その次の日から、P君は毎日仕事帰りに、森の端道で待っている将校に会った。 

将校はその都度チョコを渡し、P君は歩きながらチョコを食べ、その日あった出来事などを話した。

(何を話していたかは忘れたらしい)

将校は自分からは話をせず、終始ほほ笑みを絶やさず、頷くだけであったという。

そんな日が続いたある日、いつも待っている将校がいなかった。

P君はチョコも食べたいし、何よりも好奇心で、森の中にある収容所へと向かった。(将校から聞いた)

近づいてはならないと将校から言われたが、好奇心が勝ったらしい。

森を歩いていると(将校から聞いた)何かが腐ったような匂いがする。 

森を抜ける途中、それはあった。

大きな穴。沢山の死体。

P君は叫び声一つ上げず、ただ震えながら見ていた。 

その時、後ろからドイツ兵に肩を捕まれ、そのまま収容所の将校の部屋に連れていかれた。

(どのくらい歩いたか、収容所内をどう行ったか、まったく覚えてないらしい)

部屋に入ると、大きな机に将校は座っていた。後ろの壁には大きなヒトラーの肖像画。 

P君は今になって震えが止まらず、将校をちらちら見ていた。 

将校は相変わらずほほ笑みを絶やさず、「そこに座りなさい」と言い、P君が座るとチョコを差し出した。

そして、「さあ、食べなさい」と言った。 

P君は、もう食べるどころではなかったそうだ。 

P君は「なぜ、あんなことをするんですか?」みたいな事を言ったらしい。 

すると将校の笑みが急に消え、P君の肩に手を乗せて、ゆっくりこう言ったそうだ。 

「あれを見たのかい?」

一回頷いて、顔を近付けてくる。

「人間はね・・・何にだってなれるんだ。さあ食べなさい」

P君はこの時、泣きながらチョコを無理矢理食べたそうだ。

その後、ドイツ軍の車で家まで送ってもらい、以後部屋の中に閉じこもっていたそうだ。

(自転車は兄が取りにいった)

P君とは、私の嫁(ポーランド人)の爺さん。 

爺さんは一昨年他界した。 

ドイツ将校の名前は不明。 

戦後どうなったかも分からないそうだ。

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