ある日の夕方

2017.10.03.Tue.21:15

ある日の夕方・・・。

砂浜を散歩していたんだ。

太陽が沈むのには間があって、周りの風景は全て茜色に染まっている。

恐いくらい鮮やかな色だった。

そんな中、ゆっくりした足どりで歩くのはいい気分だった。

俺はこんな素晴らしい夕景に満足していたんだけど・・・。

30分程歩くと、防波堤に出た。

海に向かってずっと延びている岸壁、その先端に灯台がある。

ふと、その少し手前に誰かが前かがみになっている人が目に入った。

白い服を着た子供のようだ。

どうも様子がおかしい。苦しいのか肩で大きく息をしているのがはっきりわかる。

小走りで子供に近づいていった。

とにかく具合が悪いのなら、手助けしないと・・・。

「おい!どうした!!具合悪いのか!?」

子供の肩の辺りを叩いた。

するとその子供が俺の方を向いたんだ。

その瞬間・・・。

すーっと辺りが真っ暗になってしまったんだ。

今まで茜色に染まっていた風景が、

薄墨色も群青色も飛び越えて真っ暗闇・・・。

岸壁に打ちつける波の音しか聴こえない。

子供が何処にいるのかも見えない。

とにかく、尋常の暗さじゃなかった。

いくら時間が経っても目が慣れないんだ。

恐ろしくなって、思わず地べたにしがみ付いていた。

しばらく、動けないでいると、

やがて前方にチカチカと黄色い光が2つ見え始めた。

遠くの光じゃない。それどころかすぐ眼前で光っている。

「フー、フー、フー・・・」

息の音が聞こえる。

ズルッ、ズルッ・・・と何かを引きずる音も・・・。

そして・・・。

何かヌルっとしたものが俺の顔に触った。

その瞬間

「こいつの正体をみてやらなきゃあ」

なんて思ったんだ。

恐ろしくて仕方が無いのに・・・。

はいつくばっていた両手をやっとの思いで地べたから引き剥がし

前の方、黄色い光の点滅する方へ突き出した。

「えっ!?」

俺はバランスを崩して、

そのまま岸壁からまっさかさまに海に落ちそうになった。

何も無いんだ。

光も音も聞こえているのに、手はその光のもとに触れない。

血液が全部下に下がったような、嫌な気分におそわれた。

もう、手探りで砂浜側に戻ろう。

そう思って再び地べたに手を付いた。

「ねぇ、僕の顔見てくんないかな?」

耳元ではっきり聞こえた声。

それは子供の声だった。

何故か薄っすらと明るくなっていて、前方に砂浜が見えた。

でも、視界のすみに人間の顔がある。

白い服も見える。

俺は、すこし視線を右にずらした。

その顔を見た瞬間、物凄く後悔した。

振り切って逃げるべきだったんだ。

その子供は・・・いや、子供だと思ったのは・・・ 

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