立体駐車場

2018.02.07.Wed.21:27

これは、ある男子大学生が経験したアルバイト先での話である。

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大学に入学して3ヶ月ほど経った頃、僕は大型スーパーでバイトを始めた。23時の閉店まで入っている遅番は、仕事が終わったら店の駐車場を見回りして帰るというのがルールだった。




その日遅番だった僕は、駐車場の見回りが終わって帰宅しようとしていた。

同じく遅番で入っていた年配の女性に声をかけられた。
「駐車場を見てきたんだよね。大丈夫だった?」

女性が不安そうな顔をしていたので、
「大丈夫でしたよ。駐車場で何かあったんですか?」と聞いた。

すると、その女性は小さな声で僕に言った。
「駐車場でね、前に飛び降り自殺した人がいるのよ。出るってウワサもあるから…」
「自殺ですか…怖いですね」

気味悪く思ったが、どうしようもできない話だ。僕は特に気にしなかった。

バイトを始めて2ヶ月ほど経った頃、駐車場へ見回りに行くと、誰かの視線を感じた。しかし、駐車場には誰もいない。気のせいだと思って考えないようにした。

そして3週間前のことだ。この駐車場から女子高生が飛び降り自殺をした。失恋が原因らしい。頭から落ちて即死だったと聞いた。

また自殺か…ほかの場所にしてくれ…と思いながら、僕はバイトを続けていた。女子高生が飛び降りてから、特に何もなく1週間が過ぎた。

いつものように駐車場の見回りをしていたときのことだ。1階から3階までの見回りが終わり、残りは4階のみ。

その上の屋上は、女子高生が飛び降りてから立ち入り禁止になっていた。

4階の見回りを終えて帰ろうとしたとき、ふと外を見た。そのとき目を疑った。セーラー服を着た女の子が落ちていく姿を見たのだ。

また自殺なのか!?
僕は急いで4階から下を見た。
しかし、辺りは静かで人の姿もない。

自分が考えすぎて幻覚を見たのだと思い、僕は何事もなかったように急いで帰ることにした。

次の日バイトを休もうと思ったが、代わりはいないし無断欠勤するわけにもいかず、仕方なく出勤した。

その日の駐車場の見回りは、なるべく窓のほうを見ないようにした。3階までの見回りを終えて4階に来たとき…なぜか足が窓のほうへ向かってしまう。心の奥では気になって仕方がないのだ。

柵まで来たとき、僕は見てはいけないものを見てしまった。無表情な顔をした逆さまの女の子を見たのだ…。

僕は声にならない叫びを上げながら、走って逃げた。

「これはもう気のせいじゃない!」

その日帰宅すると、食事も喉を通らずにすぐベッドに入った。明日もバイトだと思うと怖くて仕方がない。しかし、理由を言っても笑われるだけな気がして、次の日もバイトに出かけた。

とにかく今日は外を見ないようにしよう。いつものように駐車場の見回りをして4階に着いた。

なぜか4階にたどり着くと、勝手に柵のほうに向かってしまう。これは自殺した女子高生の力なのか。もう見たくない。しかし瞼を閉じることもできない。この日もまた見てしまった…。

しかし、昨日と違って無表情じゃない。女の子が少し微笑んでいるように見えた。

その日以来、バイトへ行く日は必ず女の子を見るようになった。それも少しずつ唇の端が持ち上がっているのがわかった。

なぜ少しずつ笑っているのだ?
最後にはどんな表情を見せるのか…。

先週の水曜日のことだった。そういえば、女子高生が自殺した日も水曜日だ。

この日の女の子の顔は完全な笑顔だった。逆さまだったが、その目は僕を見ていた。

僕はすぐに後ろを向いて走って逃げようとした。
そのときだった。
「一緒にきて…」

ささやくような声が耳のそばで聞こえたのだ。
僕の体は震えていた。逃げなければ僕は女の子に連れて行かれてしまう。気がついたら無我夢中で走っていた。

もう限界だ。僕は次の日にバイトを辞めた。
本当の訳は話さなかった。

しかし、あの笑った顔とささやく声は決して忘れることはない。
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