中に誰かいる

2018.02.09.Fri.21:32

これは、ある男が転勤で地方のアパートに住み始めた頃に経験した話である。

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その部屋は1階の角部屋で、6畳2部屋の2DKの間取り。いわくつき物件でもなく、特に何の問題もなく暮らしていた。

ところがある日、突然おかしな現象が起こるようになった。寝室で寝ていると、リビングから話し声が聞こえる。

最初は隣の部屋から聞こえるものだとごまかしていた。

しかし、明らかにリビングから聞こえるのだ。
私は幽霊を信じるタイプではないし、もちろん霊感もなかった。

こういうのは気にしないのが一番だと思い、話し声が聞こえてもなるべく怖いことを考えないようにした。電気もつけっぱなしで寝るようにした。

そんな状態が2週間ほど続くと、さすがの私でも恐ろしくなってしまい、精神的におかしくなりそうだった。

仕事が終わると友人や同僚の家に転がり込んで、家に帰らない日々が続く。

はじめは信じてくれないだろうと思ったが、学生時代からの友人に話すと親身に話を聞いてくれて、一緒に自分のアパートへ来てくれることになった。

友人がドアノブをまわそうとした瞬間、ふとその手が止まった。

「部屋の中で誰かがノブをまわしたよ」

友人は咄嗟にドアノブから手を離した。
私は鳥肌が立った。

部屋のほうからドアノブをまわしている誰かがいる。ガチャガチャと動くドアノブ。私たちを部屋に入れないようにしているのか…。

友人と私は怖くなってその場にいられなくなり、走ってアパートを飛び出した。

近くの公園で落ち着いて考えてみた。幽霊とは限らない。もしかしたら空き巣かもしれない。そう思って友人と警察へ行くことにした。

「部屋に誰かいるようで空き巣かもしれないんです」と言うと、お巡りさんが一緒に部屋まで来てくれることになった。

連絡を受けてアパートの管理人も来ることになり、4人で部屋へ向かった。今度は先ほどのようなことはなく、普通にドアノブをまわして部屋に入った。

空き巣に荒らされた形跡はないか、盗まれたものはないか入念にチェックしたが、どうやら空き巣ではないようだ。

お巡りさんはまた何かあれば連絡してくれと言って、戻っていった。 私は管理人に自分がこの部屋で体験したことをすべて話し、この部屋のことを教えてくれと言った。

しかし、管理人は何も心当たりがないという。確かにいわくつき物件はあるが、このアパートは特に何も起こっていないし、今までウワサも聞いたことがないらしい。

管理人が話し終わったその瞬間、ガチャガチャという音が聞こえた。思わずドアのほうを向くと、そこには誰もいないのにドアノブが動いていた。

ここにはもう住めない。私はすぐに引越しをすることに決めた。とにかく早くこの部屋から出たかった。

友人は今でもあのときのドアノブの感覚が忘れられず、ドアノブが怖くてつかめないらしい。

私も引越してからだいぶ落ち着いたが、いまだにドアノブを見ると怖くてたまらないのだ。
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