手すり女

2018.02.11.Sun.21:34

これは、ある女性がかつて通っていた小学校で噂されていた話である。



その学校は歴史が古く、有名な“学校の七不思議”があったが、その中でも特に忘れられないのが『手すり女』の話だという。



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その小学校には、今はもう使用禁止になっている「外階段」があった。その名の通り、その階段は外に面していて、背丈の低い今にも壊れそうな手すりがついている。



まだ校舎が木造だった時代には「外階段」は解放されていて、生徒も自由に利用していたそうだ。



その時代、ひどいイジメを受けている少女がクラスにいたという。少女は休み時間に教室を出て、その「外階段」の手すりにもたれながら外の景色をボーっと見ていたそうだ。



木造の古い校舎はかなりのガタがきていて、そろそろ建て直しを考えていた頃だった。



ある日、いつものように少女は「外階段」の手すりに寄りかかった。その手すりはかなり腐っていて、いつ壊れてもおかしくない状態だった。

ガクンと前のめりになった瞬間、少女の体は校舎の4階から投げ出され、地面に叩きつけられた。血まみれになった少女は即死だったという。



それからというもの、「外階段」には血まみれの少女の霊が現れ、「外階段」に近づく者を突き落としてしまうという話が生まれた。



そして、落とされた者は新たな『手すり女』として、死んでからもそこに縛られてしまうというのだ。



その話を聞いたのは、私が小学校5年生のときだった。当時仲良しだったグループは誰もその話を信じず、むしろ面白がっていた。



それもそのはず、その「外階段」という場所は先生からも見つかりにくい格好の遊び場だった。



『生徒立ち入り禁止』という張り紙は張ってあるが、ドアの鍵を外せば簡単に入ることができた。



その日の放課後も私たちは「外階段」に集まっておしゃべりをしていた。気づけば空は夕焼けで少し肌寒く、街灯もつき始めていた。



一人また一人と友達が帰宅し、気づけば私ともう一人の友達二人だけが残されていた。



もう一人もそろそろ帰ると言い出し、両親が共働きだった私は誰もいない家に帰るのも気がひけて、なんとなくその場所でぼーっと時間を潰していた。



部活が終わって帰宅するクラスメイトが見える。教室の電気も消えたようだ。静寂の中、ひとりぽつんと残された私は、不意にあの『手すり女』の話を思い出した。



話の通りだったら、その少女は死ぬ直前までここにいたはずなんだ。



当時、怖い話に怖気づいたことはなかった私でも、ひとりぼっちでその場所にいると、急に寒気を感じてしまった。



思わず、少女が叩きつけられた地面へと視線を下ろした。



その瞬間、息が止まりそうになった。



視線を下ろしたその下に、一人の少女が立っていたのだ。赤い服を着た少女が、1階からこちらを見上げている。



まだ学校にいた生徒が、たまたま私を見上げていたのかもしれない。だけど、こんな時間に校舎裏に訪れる生徒はほとんどいないだろう。



私は思わずドアへ走り、ノブをかき回した。

しかし、ドアは開かない。そうだ、ここは4階。3階のドアから鍵を外して4階へ上ってきたんだ。



しかし、下に降りるのがものすごく怖かった。

あの少女が──『手すり女』が階段を上ってきたら?



考えると手足が震えてきた。

だけど、このままこの場所で固まっていても仕方がない。



鍵を開けて入った3階の踊り場はしーんと静まり返っている。2階へ続く階段を見下ろしてみたが、人のいる気配はない。私は安心して3階のドアノブを掴んだ。



その時だった。私の視界に赤いものが見えたのだ…。ドアノブを見ていた私の視界の端、階段をはさんだすぐ隣に、赤い服を着た人影が視界に飛び込んできた。



ドアノブを見つめたまま、恐ろしくて動くことができない。その人影は、体を私のほうに向けたまま動きを止めている。



長い間、そのままの状態が続いた。私は勇気を出して思い切ってドアノブを回し、一目散に逃げ出した。このことは今でもはっきりと覚えている。



次の日、そのことを友達に話したが、みんなは信じてくれなかった。そのあとも何度か「外階段」に訪れたが、その少女に会うことはなかった。



彼女は今でも、あの階段をさまよっているのかもしれない。
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