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開けて

2018.07.03.Tue.20:50

大学進学のために上京した時の話です。

私は、志望した大学に見事受かり、4月から新しい学校生活を送るために、田舎から上京して一人暮らしをする事になりました。


学校まで電車で20分ほどで通える距離に、ワンルーム・ユニットバスの少し古いアパートを借りる事になりました。

古いと言っても、汚いイメージはなく、むしろリフォームしたかのように外観は奇麗でした。それでも築10年以上は経っていたそうです。

引越しも終わって、新しい部屋に慣れてきた頃、私は入学式までの間、夜遅くまで本を読んだり映画を見たりするのが日課でした。

ある日、夜中本を読んでいるとうとうとと眠くなって来ました。

いったい本をどこまで読んだのか、いつ眠ってしまったのか全く覚えていませんでした。


しばらく経って、私はトイレに行きたくなって目を覚ましました。

ユニットバスの方へ向かう途中、部屋が暗かったので壁にぶつかりながらも、どうにか電気をつけて用を足す事に。

寝起きでボーっとしていたので、しばらく便座に座ってユニットバスのドアをじっと眺めていました。



今何時なんだろう…

「…… て…」



え?



「開けて…」



今にも消えてしまいそうな細い声で、でもはっきりと聞こえました。

確かにドアの向こうから女の人の声がしたのです!



「開け…て」



何?

私は、今一体どういう状況なのか、理解出来ずにパニックに陥りそうになりました。

誰!?何で??

必死に考えました。絶対にありえない!こんな状況!

私は今にも泣き出しそうになりながら、あらゆる可能性を考えました。

ふと思いついた事…

あ… 本を読みながらうたた寝しちゃったのに、電気消えてた…。消した覚えないのに…。

そう思った瞬間





「開けろ!!」





さっきの女性とは思えない声でしたが、何か必死になっている、そんな声でした。

その瞬間、ガチャガチャとドアのノブをこじ開けようとする音がしました。

私は声にならない声で泣き叫びながら、必死にノブを押さえました。開けられたら大変な事になると思ったからです。



本が床に落ちる音で目が覚めました。

良かった…夢だったんだ。

そう思えたのも一瞬でした。



何と、部屋の電気は消えていて、変わりにユニットバスのドアの隙間から光が漏れていたのです。

私は怖くて中を確認する事が出来ず、朝になるのを待つ事にしました。


後から聞いた話では、昔その部屋に住んでいた女性が、揚げ物をしている際に、誤ってフライパンをひっくり返してしまい、全身に油を浴びて火だるまになった事件があったそうです。

彼女は、なんとかシャワーの水を出そうとしましたが、間に合わなかったとの事でした。

アパートが妙に奇麗だったのは、火事の焼け跡を隠すためだったのです。

もちろん私は、その話しを聞いた日に、親に事情を説明して、別のアパートへ引越しました。



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