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当り屋

2019.02.02.Sat.20:55

叔父に聞いた話。

今はどうか知らないが、昔は当り屋という商売があった。

自分で車にぶつかっておいて運転手に因縁をつけ、
慰謝料や口止め両をふんだくるという、ヤクザな生業だ。

叔父が小学生のころ、自転車ごと車にはねられたことがあった。

幸いたいした怪我もなかったのだが、運転手が車から降りてくると
突然見知らぬオッサンが横から現れて

「おい、俺のガキになんてことしてくれたんや」

と運転手に迫った。
叔父が怖さと痛さで泣いていると、オッサンは金銭を要求しだした。

もめた末、オッサンが運転手をどつくと運転手は
悲鳴をあげて車に乗り込んであっという間に逃げてしまった。

オッサンは「済まんかったな坊主」といって慰めてくれた。

叔父はなんとなくこの人は当り屋だと分かったという。

それを聞いてみると、

「俺はな、むかし無茶しすぎていま体ボロボロや。
首は何度もやったし、肋骨も一本ないんやで」

そう言って胸を触らせてくれた。

その時異様な胸の冷たさに叔父はぞっとしたという。

「それにな、心臓もないんや」

無理やり触らされると、そこも冷たくて確かに鼓動はなかった。

「じゃあ、俺あの運転手追いかけるわ」

そういうとオッサンは叔父を残して去っていった。

あれはこの世のものではなかった、と口癖のように言う。


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