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ナースコール

2019.03.19.Tue.20:55

M県Y市T病院。

今から35年前の、梅雨時の晩の事である。

夜勤に当たっていた新人看護婦M子は、1年先輩のHとナースステーションにいた。

その頃M子は独り暮らしをしようと考えており、
Hに部屋の家賃の事や家具の事を相談していたという。

時間は午前1時半。前日22時の巡視が終わり、次の巡視まであと30分というところだった。

突然、ナースコールが響いた。

どこからのコールなのか、パネルを見て確認する。

するとどうした事か、ナースコールは半年前に閉鎖し、
廃病棟となった西棟から掛かっていたのである。
西棟は電気はまだ通っているが窓は塞がれて、
外来に使われていた玄関にも鍵が掛けられている。

ナースステーションから鍵を持ち出さない限り、人が入る事は出来ない。

2人は戦慄した。

しかし病棟の管理の事もあり、見回りに行かなくてはならない。

Hがあまりに怖がるので、多少楽天的で活発な性格をしたM子が見回りに行く事になった。

ナースコールは西棟の1階、112号室から。

M子は懐中電灯を片手に、半年前までのこの病棟の様子を思い出しながら112号室へ向かった。

少し立て付けの悪いドアを開ける。すると不思議な事に、
病室から薄ぼんやりした灯が廊下に溢れた。

病室の裸電球が点いていたのだ。

風もないのに、電気の紐が揺れている。全く無気味である。

M子はもうシーツやマットを取り除かれ、
冷たい鉄パイプと板だけになったベッドの上に、
妙な物が置かれている事に気付いた。

古ぶるしい木の箱と、聖書。

木の箱には臍の緒が入っていた。


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