校舎の壁の小さな窓

2016.09.01.Thu.17:16

高校時代の友人『A』から聞いた話だ。

彼が中学3年生のころの事。それは進学塾からの帰宅途中に起きた。

自転車を漕ぎながらふと時計を見ると、針は九時半を回っていた。

「まずいなあ。十時からみたいテレビがあるし…。近道するか…。」

しかたなく彼は、普段は足場の暗さから避けている小学校脇の農道へ向かった。

暗い農道を走り続けると、急にひらけた所へと出た。

やがて、遠くに小学校の校舎が見えてくる。

「あれ?」

校舎の壁の小さな窓に誰かがいる。

彼の自転車を漕ぐ速さが増し、段々と小学校へと近付いてゆく。

それは、ひとりの少女であった。窓から腰まで身を乗出しこちらの方をジッと見ている。

「こんな時間に何やってんだろう。何年の娘かな。」

根っからのひょうきん者の彼は、自転車を止め少女に向かって、

大声で叫びながら、ありったけのギャグをかました。

しかし、少女は無表情のまま一言も喋らず、

ただ虚ろな目で彼をじっと見つめているだけであった。

「変な娘…。」

あきらめて、自転車のペダルを漕ぎ始めたその瞬間!彼は気が付いた。

「変だ!あの壁に窓なんかある筈無い!

彼女の胴体も不自然に長すぎるし、だいいち腰から下がねじれている…。」

彼は悲鳴を上げ、泣きながら家へと走った。

そして、テレビは見なかった。

翌日、新聞で昨日あの小学校で自殺した少女がいた事を知った。

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