鷹ノ巣山の霧

2016.09.18.Sun.16:03

大学2年の6月に不思議な体験をしました。長文で読みにくいと思いますがご容赦下さい。 

当時私は、大学の野生生物研究会に入っていました。 

研究会のフィールドは奥多摩の鷹ノ巣山で、山頂付近の避難小屋を拠点にデータの収集を行っていました。

不思議なことは、1年の後輩3人を連れて昼前に下山中の時に起きました。 

後輩に道を覚えて貰うために、私以外は初めてのルートである七ツ石山経由で奥多摩湖に降りるコースを縦列で歩いていました。

天候は快晴、雲一つ無い青空で爽やかな風が吹いていました。 

オオルリやジュウイチ、ホトトギス等の夏鳥の声が周囲から聞こえて、気分良く歩いていました。 

このルートの尾根上の開けた場所に、廃屋と井戸のような直径1m程の土管があるのですが、

尾根上なので日当たりも見晴らしも良く、このルートを歩くときはいつも休憩場所にしていました。 

先頭の私は、その廃屋と土管が見えたので、後ろの3人にもう少しで休憩しようと言いました。 

そして、廃屋に到着してザックを下ろして一息ついたときに、私の真後ろを歩いていたA君が、 

「ここに女の人がいませんでしたか?」と聞いてきたのです。 

「誰もいないよ。人住んでないし、俺は見てないよ。どこに居たの?」 

「この土管を覗き込むように立っていました」 

「どんな格好だった?」 

「青い服を着たおばさんでした」 

「1人だけだった?」 

「見たのは1人だけでしたが、周囲が騒がしかったから団体で来ているのかと思っていました」 

「俺は誰も見なかったよ。BとCは誰か見た?」 

B君とC君の2人とも、「いいえ、誰も見てません」と言いました。 

「その廃屋の中にいるんじゃないの?見てきなよ」 

A君は廃屋の戸を開けて中を見たのですが、誰もいません。 

「最初から誰もいないよ。疲れてるんじゃないの?」 

「いやー、確かにいたんですよ」 

「先頭歩いていた俺は見てないんだよ」 

「でも立ってたんですよ」 

「まあいいや、とりあえずお茶湧かそうか」と言った時、突然、濃い霧が周囲を覆い始めたのです。 

そして、霧が立ちこめた瞬間、A君は「うわあーっ」と叫びながら、走って下ってしまいました。 

私はB君とC君に「ザック担げ。追うぞ」と言って、ザックを背負って追いかけました。 

霧はとても濃くて、視界は5mも無い程でした。 

「A、待て。走るな。そこに座ってろ。B、C、付いてこいよ」私は、叫びながら走りました。 

時間にしたら2~3分だと思います。ルート上でしゃがみ込んでるAを見つけました。 

Aを見ると顔は青ざめ、体が小刻みに震えていました。 

そして私が「おい、どうした。しっかりしろ」と言いながら、Aの肩を持って体を揺すったとたん、深い霧が急に晴れたのです。 

私たちは、廃屋から少し下った尾根上のルートにいました。 

周囲の山肌を見ても霧はどこにもありません。雲一つ無い快晴で、夏鳥の声が聞こえていました。 

Aを見ると顔色も良くなり、体の震えも止まっていました。 

私が「どうしたんだ?」と聞くと、「とても怖くなって逃げました。もう大丈夫です」と言いました。 

Aが回復したので、私たちはそのまま奥多摩湖に下って帰宅の途につきました。 

その後、Aとその時の事を何回か話しましたが、

走って逃げたのは霧に捕まると殺されると思い、私の声が聞こえたので覚悟を決めて座ったそうです。 

その後、私もAも鷹ノ巣山に何度も登りました。同じルートも歩きました。 

夜間に単独で登った事もありますが、何も起きませんでした。 

今でも不思議なのは、何故霧が発生したのかわからないことです。気持ちいいぐらいの快晴で湿度も低く、適度な風もありました。

とても霧の出る条件ではありません。 

また霧が晴れたとき、周囲の山にはどこにも霧がありませんでした。 

あの霧は何だったのか、今でも疑問です。 

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