小さな祠の呪い

2016.09.26.Mon.21:17

小学校の頃、通学路に小さなほこらがあった。 

その傍らに背が40センチぐらいの地蔵が4つ、通学路のほうを向いて並んでたんだが、 

右端の地蔵だけ顔が見えないように、チュンリーのフンドシみたいに顔の前面が布で隠されていた。 

上級生とかからのうわさで、その地蔵は顔を見た人間に呪いをかけるので、顔を隠されているのだという。 

絶対にその地蔵の顔を見てはいけない、と話題になっていた。 

そもそもそのほこらは、小学生が簡単には登れないようなガケ(というかただの斜面?)の高みにあり、 

ほこらへの道もあるにはあるんだけど、ガケづたいでちょっと危険だったし、

また、ほこら周辺も小学生には不気味で怖い感じだったので、誰も近づこうとしなかった。 

が、ある日、同じクラスのA君が、呪いが本当にあるかどうか確かめると言い出して、

仲間を連れてそのほこらを訪れた。(俺はその時同行しなかったけど)

4人でそこを訪れ、言いだしっぺのA君がガケを登って地蔵の所へ行き、

残りの3人は、通学路でその様子を見ていたという。 

実際に手をかけたA君によると、

顔の前面だけが隠されていただけでなく、更に顔が何重にもぐるぐる巻きにされていて、

内部は安全ピン等で厳重に固定されていたらしい。 

A君の手によって、ついに右端の地蔵の顔が露わになる。 

「なんだ、顔の部分が壊れてたから隠してただけじゃねーの。ほら!」 

ほら、と見るように促された残りの3人も、通学路から遠目に地蔵の顔を見た。 

その顔は、どうやら何か強い打撃を受けたかのようにひび割れ、砕け、ボロボロになっていたらしい。 

真相がわかったところで、A君はまたその顔を布で巻いておこうとした。 

が、もとのきれいなフンドシ型の巻き方がわからなくて、 

顔はぐるぐる巻いたものの、最後はドロボウのほっかむりのようにアゴの下で布を結ぶ形になった。 

以上が、小学3年の冬休み前の話。 

このあと冬休みを経た頃、A君は鼻が病気になって調子が悪くなり、4年生になってすぐに手術をした。 

A君は小学生ながら端正な顔をしてたんだが、

手術の影響らしいんだけど、ちょっと顔の形が変わって格好悪くなった。 

夏休み過ぎ、自転車の事故で顔面がひどく傷つき、 

更にそれから間もなく、家でヤカンの熱湯を被ったか何だかで顔をヤケドした。 

(その後、少なくとも中学を卒業するまでその痕跡は残っていた)

偶然かもしれないけど、地蔵をいじってから1年で、A君の顔はまるで変わってしまった。 

A君と一緒に地蔵を見た残りの3人はなんともなかったんで、 

俺たちの中で噂は、『地蔵の顔を見ると呪われる』から、『地蔵の布をほどくと呪われる』に変わっていた。

A君のヤケドから少し後、ある日の夕方、公園で遊んだ帰り。 

俺が友達と2人で歩いていて、そのほこらの前を通りかかった。 

ポロシャツのおじさんが、地蔵のあたりで背を丸めているのが見えた。その傍らにホウキが見える。 

掃除しているらしいのがわかった。

おじさんがぞうきんで地蔵を拭いているのを、立ち止まって見ていた。 

右端の地蔵は、A君が巻いたほっかむりのままである。

おじさんが次にその地蔵を洗うのか、ほっかむりを外そうと手を触れた。 

「それほどいたら呪われるよ」 

俺はおじさんに声をかけた。

「お地蔵さんはお前らのことも、みーんな見守ってんだから、呪ったりするわけねえべー」 

おじさんは、にこにこ笑ってほっかむりをほどく。

地蔵の顔はきれいだった。

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