草の根BBS

2016.10.09.Sun.12:15

このお話は、80年代末に、ある草の根BBSで実際にあったこととして語られたものです。

※草の根BBSとは個人などで運営される小規模のパソコン通信の事である。

それ以前には見かけたことはありませんが、

もしかしたら、それ以前にもどこかで語られていたものかもしれません。

ある若い男がいました。Aとしましょう。

Aは霊が見えると常々主張する医者の息子でした。

金持ちのボンボンであることをいいことに、BBSに常駐しては

(当時はまだモデムでつないでいたので、常駐するにも金が必要だった)

傍若無人な振る舞いをしていました。

今で言う荒らしみたいなもんですが、

当時は荒らしにもそれなりの技術が必要でしたし、

AもBBSに常駐していることから、

BBSのトラブル発生時にはいち早く対応したり

(ホストの近所に住んでいたらしい。でもその後、BBS管理者をクソミソにけなすおまけつき)

と、まあウザがられつつも受け入れられていたのです。

しかし、Aから度重なる個人攻撃を受けた後輩の男(Bとしましょう)

がついに立ち上がったとき、悲劇は起こりました。

いや喜劇かもしれません。

BはAをウザいなぁと感じていたCおよびBBS管理者D先輩と結託し、

AをBBSから追い出す作戦(オペレーション)を開始したのです。

ウザい奴には面と向かって言っても通じないということが、

それまでのBBSでの会話で判明していたので、Bたちは強硬手段に出ることにしました。

まず、Aがつないでいるその時に、ホストの98を落としてしまいました。

Aが管理者D先輩の部屋に電話をかけてきますが当然居留守です。

そうするとAは車で部屋までやってくるでしょう。

それを待ち受けます。

Aが合鍵を使ってDの部屋を開けました。

ガチャン。でも室内は真っ暗です。

ブレーカーを落としてあるので当然です。

「なんだブレーカー落ちてるのか?」

とか言いながらAがブレーカーを上げます。

玄関の明かりが点きます。

すると目の前に、天井からぶら下がった女の死体

(実は演劇をやっている奴から借りたマネキン)がブラーンと垂れ下がっていました。

コンセントをショートさせたままなので、一瞬後またブレーカーは落ちて部屋の中は真っ暗に。

しかしビビリのAにはこれで充分でした。

変な悲鳴を上げてAは逃げ出そうとしますが、

Aが入った後、BとCで外からつっかい棒をかましてあり、玄関の扉は開きません。

Aが中で泣き叫ぶのをBとCはニヤニヤしながら聞いていました。

しばらくして、中のAが大人しくなったので、

いまさらのようにBとCは扉を開けました。

「あれAさん?何してるんですか?」

しかしそこでBとCは凍りつきました。

Aが玄関先で失禁して白目をむいて倒れていたのです。

中に吊るしてあったマネキンはなぜか、くるくると回転していました。

とりあえずAはそのまま放置して、マネキンを片付けたりしてると、

部屋の主のDも戻ってきました。

「なんかAさんがぶっ倒れちゃったんですよ藁」

「うわー小便漏らされちゃったよ…」

そうこうしてるとようやくAが気がつきました。

「あ、あれ?」

「なあA、お前なんで人の部屋で小便もらして気絶してるんだよ?」

Dが問いかけるとAは「う!」と一言叫んで、

開いてるドアからサンダルも履かずに外に駆け出し、

そのまま車に乗って行ってしまいました。

残った3人がマウンテンデューを飲みながら、

「あいつこれでもうBBSには来ないかな」

などと話していると、Aから電話が入りました。

近くのデニーズで会いたいというのです。

Dの車にBとCも乗り込んで向かいました。

店に着くと、Aが落ち着きない様子で待っていました。

Dの部屋の鍵を持って来ていました。

「これ返します。あのBBSからは抜けさせてください。いきなり勝手言ってすみません。

いままでDさんのお手伝いで管理とかしてきたけど

(誰も頼んでねーよ!の無言の突っ込みあり)もう限界です」

BとCはもう笑いをこらえるのに必死な状態です。

Dが、いかにも意外そうな口調でAに問いかけます。

「なあ理由教えてくれよ、大体なんでさっきは俺の部屋にいたんだ?」

口ごもるAを、BとCもはやしたてます。

「なんか気になりますよ!」

「教えてくださいよ!」

暫くして、漸くAは語り出しました。

「…いや、最初女の幽霊かと思ってビビったんだけど、

暗がりに目が慣れてきて、よく見たらマネキンだったんだよ。

それでなんだ、いたずらかよ、

ってちょっと安心したり、むかついたりしたんだ。

でも、なんか変なんだよ。

そのマネキンが、こっちを睨んでいるみたいで、

しかもなんか、すこしづつ動いているみたいな気がするんだよ。

…で、最初はゆらゆら揺れてる感じだったんだけど、

そのうち、マネキン自体がくるくる回り出したんだ。

別に振動も何もない部屋の中でだよ。

あ~、こりゃまずい、どっかとつながって、なんか呼んじゃったな、って思って、

とにかく外に出なきゃってドアノブを回すんだけど、回らないんだよ。

いや違うな。回るんだけど、鍵が壊れちゃったみたいに、ぜんぜん手ごたえがないんだよ。

で一回ドアの方を向いたら、もう怖くて後ろを振り向けなくってさ。

相変わらずマネキンは回っている気配がするし…で、

目を閉じて南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏って唱えてたら、ふっと気配が消えたわけ。

あー去った、って安心したら、

『 つ な ぐ な ! 』

耳元で一言。老婆の声で。

気がついたら、みんないただろ?怖いわ恥ずかしいわで慌てて逃げ出したんだよ。

俺もうあの部屋には行かない、いや行けないや。このBBSもやばそうなんで、やめます」

「やばそうってなんだよ?」

これから部屋に帰らなければならないD先輩が尋ねます。

「さっき、『みんないた』んですよ。D先輩とBとC、あと、その後ろでこっちを睨んでた老婆の霊。

なんか地縛霊系の奴っぽかった。偶然あの場所につながって、連れてこられたみたいな感じで、

恨みの念がものすごい感じでした。先輩も引っ越したほうがいいと思いますよ。

あの部屋は、もうだめです」

そう言うと、Aは席を立って去ろうとしました。

「あと、言い忘れたんですが、」

Aが去り際に言いました。

「BBSが落ちる瞬間、あの老婆のビットマップを仕込むなんて、まさかD先輩にもできませんよね?

俺の98に、なにか来てないといいんですけど…」

Aが去った後、BとCはD先輩と話しました。

「いや、ホスト落とすのだって、いきなりモデム抜いただけだし…あれはAのハッタリですよ!」

「俺もそうだろうと思うけどさ、あの部屋に一人で住んでる俺の身にもなってみろよ…」

その後しばらくして、D先輩は引っ越し、そのBBSは自然消滅したそうです。

老婆の霊が本当にいたのか、いたとしたら今はどこにいるのかはわかりません。

僕がその話を聞いたときは、

「この話題をBBSで振ると、その老婆がやってくる」

なんてありがちなオチを聞きましたが、その老婆がやってきても「つなぐな」と言ってみたりとか、

モデムを誤動作させるとかしかしないそうなので、ほのぼの系と言えなくもない…

#大体いまどきモデムなんて使ってないよ、どうすんだ?>老婆の霊(w



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