供養の人形

2016.12.07.Wed.16:39

俺が小学の頃だったかな・・・。

季節は8月くらい、夏休みの終わりの頃だった。

俺の故郷は海の近くで、海岸線には堤防がある。

その堤防の近くの土手で、よく仲間と遊んでいたものだった。

その日は夏休みももうすぐ終わろうとしている頃で、

俺達はスケボーを持ち出して、その堤防の土手の近くでスケボーをしていた。

642 :617:04/01/30 03:35 

しばらくたって俺は喉が渇いたんで、近くの自販機までジュースを買いにいった。

他の仲間達はまだ土手でスケボーしているのが、自販機のとこからでも見えた。

ジュースを買って土手のところまで戻っている途中、ふと気づいたんだ。

・・・仲間の一人がいない。

俺はそいつがいないことを他の仲間に言った。

「Yがいないみたいなんだけど」

すると他の仲間は皆知らないみたいで、

「さっきまで確かにいたんだけどなぁ」って感じで、どこにいったのか知らないみたいだった。

その時間、海は満潮で、風も強く波は荒れていた。

海に落ちたりしていたのなら大変なことになる。

そう思った俺らは、急いでYを探し始めた。

土手の下は草が覆い茂っていて、ひどいところでは人の背丈にもなる。

そこをかき分けて、仲間と一緒にYの名前を叫びながら探していた。

そして、仲間の一人の声が聞こえたんだ。

「いたぞーーーー!!」

俺達はその声がしたところに急いで駆けつけた。

そこにはYが倒れていて、そのそばに叫んだ仲間の姿があった。

Yの顔は真っ青で、左の足首を押さえてうずくまっていた。

顔中汗でぐっしょりで、うわごとのようになにかブツブツ言っている。

俺達は、これはただごとじゃぁないって感じて、

すぐそいつをチャリに乗せて、近くの病院に連れて行き、Yの両親に連絡をとった。

Yは複雑骨折だった。

それが不思議な事に、骨が縦に砕けているような感じだったそうだ。

Yの両親からお礼を言われて、俺達は家に帰った。

二学期を迎えて、最初の日曜日。

俺はそのとき一緒だった仲間と共に、Yが倒れていた草むらを探検しに行った。

なぜあんなところにYは倒れていたのか?

なぜあんな怪我をしたのだろうか?

・・・・ちょっとした探偵のような気分だった。

しばらく見て回ったのだが、何も見つからなかった。

一緒に探索していた仲間は飽きてきたらしく、土手に行ってスケボーをし始めた。俺もそろそろ飽きてきた。

その時だった。

Yが倒れていた場所の少し向こうに、草が生えていないところを見つけた。

近づくと、そこは何かを燃やした後のようで、炭になったものが山のように重ねられていた。

ゴムが焼けたような嫌な匂いがした。

近づいて、ゆっくりとそれらを観察してみた。

全身に鳥肌が立つのが分かった。

それらはすべて人形だった。

京人形のようだった気がする。

切れ長の目や小さな唇が真っ黒に焼け焦げていた。

その人形が全部で50・・・いや、もっとあったような気がする。

ひとつだけその山から手前に落ちていた人形が目にとまった。

その人形の左足首が真っ黒に焦げて溶け落ちていた。

あまりにも恐ろしくて、その人形のことは仲間にも言わなかった。

ただ早く家に帰りたくて、仲間をせかしてその場を離れた。

帰宅して、両親にその事を話してみた。

両親は最初笑いながら聞いていたが、俺が人形を見たというあたりで顔つきが険しくなった。

俺は両親から静かにある事を聞かされた。

俺の住んでいる町は昔、海だったこと。それを干拓して埋め立てたこと。

その作業は当時は大変で、多くの人間が犠牲となったこと。

犠牲となった人たちを供養するために、神社に人形をそのつど奉納していたこと。

人形を奉納していた神社は今は朽ち果てて、誰も訪れる人がいなくなってしまったこと。

そしてその神社が、俺達がスケボーして遊んでいたあの土手の直ぐ近くにあるということ。

誰があの人形をあの場所で燃やしていたのかは分からない。

あの時なにがあったのかをYに聞いても、口を閉ざして何も話さなくなってしまう。

あれからずいぶんと長い時間が流れたが、俺は今でも人形が嫌いだ。

たとえどのような人形でも、あの時のことを思い出してしまうから。

関連記事
コメント

管理者のみに表示