ぬいぐるみ

2016.12.11.Sun.21:31

父と母と娘と一人の召使いがその家に暮らしていた。

両親は一年の三分の一を留守にするほど仕事に忙しかった。娘の相手さえ出来ないほどに。

その代償として、両親は娘にぬいぐるみを何個も与えた。

娘はそのぬいぐるみに両親の愛を感じた。

仕事のため家を空け、お互い会う事すらない日々が続き、

夫婦の間に亀裂が入るのにはそう時間はかからなかった。

娘への愛もいつしか薄れ、ぬいぐるみを贈るのもただの習慣となった。

それでも娘はそれを愛の印だと信じて疑わなかった。

家にいる時、両親は娘に辛く当たるようになった。

やがて召使いもそれを真似するようになり、両親が仕事に出てからも娘は苦痛の中で日々を過ごすようになった。

人の心にある醜い感情を知らない娘は、何故皆が突然自分に辛く当たるようになったのかわからなかった。

「ねえ、なんで私を叩くの?悪口を言うの?

 お父様もお母様もお前も。みんな私を愛してくれていたのに…何故突然?」

召使いはあまりにも無知な娘に答えた。

「貴方に対して愛を持ってる人なんて、もう誰もいないんですよ」

言葉の後、召使いは娘を殴った。

裕福で美しい娘に以前から感じていた嫉妬のせいもあった。

娘は抵抗し、召使いを突き飛ばした。召使いは頭を打ち死んだ。

無知な娘は死すら知らず、何があったのかよくわかなかった。

動かなくなった召使いを見ながら娘はぼんやりと考えた。

皆は私に対する愛がなくなった。

どこかに愛を置いて来てしまったのだろうか?

どうすれば皆元に戻ってくれるのだろう?

愛を体に詰め込めば、また幸せな日々が帰ってくれるだろうか……?

そうだ、昔のお父様やお母様の愛の詰まったぬいぐるみの中身を、皆の中に詰め込めばいいんだ!

娘は良い事を思いついたと、とても喜んだ。

娘は母の部屋にあった小さな刃物で、ぬいぐるみの腹を裂き綿を出した。

このフワフワとした物が、両親の愛なのだと娘は思った。

次に召使いの服をめくり腹を切ったが、上手く切れない。

娘は台所にあった豚などを解体する時に使う大きな刃物を持ってきて、それで召使いの腹を切り開き、中に綿を入れた。

血がだらだらと出てきたが気にしなかった。

次の日に調度いいタイミングで両親が帰ってきた。

娘は両親の腹を刃物で刺した。

苦しみに倒れる両親の腹を娘は切り開き、ぬいぐるみの綿を詰め込んだ。

部屋の隅には昨日死んだ召使いの死体が転がっている。

娘は笑顔で三人を見た。

愛をたっぷりと詰め込んだんだから、これで皆また私を愛してくれるはずだわ。

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