囚人に掘らせたトンネル

2016.12.13.Tue.21:46

10年近い前の話なんだけど、就職したてで俺は寮に入ってた。

で、先輩やつるんでた友人と4人でドライブにでかけた。先輩の車でね。

いった先ってのが、東北のM市から秋田に抜ける峠道。

新道はバイク乗りが集まってるとこだったけど、先輩が向かった先は旧道だった。

洒落にならない道だったよ…舗装してないどころか、藪だらけで前も禄に見えない車一台通るのがやっとの道。

よりによって先輩はスカイラインで豪快にそんな道を走らせた。

登った先にはトンネルがあった。岩をそっくりくり貫いたようなトンネル。

時間にすれば午前1時を回ってたと思う。

囚人に掘らせたトンネルって噂を聞いてた。

ライトに照らされたもやが動いて、まるでたくさんの人が動いてるように見えた。

俺は戻りたかったけど、Uターンなんかできる広さじゃない。

トンネルを抜けてこの道を進むしか道がないし、先輩は車をトンネルに入れた。

先輩や友人は「おっかね~」ってはしゃいでた。

俺はそれどころじゃなかった…もやが車の中まで入り込んでる。

信じられないくらいの湿気が体にまとわりついてベタベタしてる感じで、体も動かせない。

はしゃいでる周りを見ながら、早くまともな道路に抜けてほしいって思ってた。

トンネルを抜け藪の中を抜け、車は国道に戻った。

気分もいくらか楽になり、俺は一息ついてた…が、考えが甘かった。

県境を越え、国道は川に沿って走る形になる。

しばらく走ると脇に吊橋があって、先輩は車を止めると言った。

「肝だめしするべ」

冗談じゃないと思ったね。

あんたの運転と、さっきのトンネルで十分肝試しじゃん。

そう言いたかったけど、周りの雰囲気壊したくなくて黙ってた。

先輩と友人一人が細い吊橋を渡っていった。

根性あるなって関心したよ。ここは結構自殺者でてるとこだったし。

俺ともう一人は残って見てた。臆病者って言われたけど。

…友人はどうだったかしれないけど、俺にはぼんやり見えてた。

橋を渡ってこっちを見てる先輩達の横に、ひとつ影が並んでた。

先輩達は最後まで気付かなかったけど…。

この日はこれで終わったよ。何事もなく。

それからしばらくして、先輩が車で事故った。

車は大破したけど、幸い怪我はなかった。こりずにまたスカイラインを買っちゃうくらい。

ただ…そのすぐ後、先輩の親父さんが亡くなり、先輩は仕事を変えなきゃならなくなった。

事故の借金とか親父さんの葬式で金がかかったみたいで…。

友人の一人は死んだ。バイクの事故で。

外傷はなかったみたいだけど、事故のショックで心臓麻痺起こして、病院にかつぎこまれしばらくして…。

もう一人の友人は、肺気腫で仕事中にぶっ倒れ入院するはめに。

で、俺なんだけど、元々このバイクてのは俺が友人に譲ったものだった。

ほとんど直後に、友人は事故って死んだわけだ。

バイク事故で死亡のニュースがでた時、知り合いは全員俺の事だと思ったらしい。

猫の件もそうだけど、身代わりだったのかもしれない。

向こうの親に合わせる顔なかったよ。

俺は俺でノイローゼっぽくなって、行方をくらました…あげくのはてに自殺未遂。

今の俺から想像もつかんけど…。W

どこまであの肝試しが関わってたのかわからんけど、あの夜から半年でこれだけの事が起こった。

今でも手首にうっすらリスカの後残ってる。

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