顔野菜

2016.12.17.Sat.11:16

小学校の頃、帰りが遅くなったので、近道に農道みたいなとこを通っていた時。

途中、潰れかけの農具入れみたいな小屋の前に、変なものがあった。

一輪の荷車の上にカブみたいな野菜が乗ってたんだけど、奇妙な事にそれには葉っぱの部分がなかった。

多少泥の付いた白い部分だけ。

カブを半分に切ったものを、二つあわせたみたいになってて、両端には根っこみたいなものも付いてた。

何だろう?と思って、近づいてよく見てみようとした時、その野菜に”目”が付いているのが解った。

最初は蝿か何かの虫が動いているのかと思ったが、ちゃんと瞳があって、それがきょろきょろ動いてた。

あまりの事にビックリして、凍り付いたように動けなくなっていた時、

「・・・っ」

何かを喋る前の息遣いのようなものが、その野菜から聞こえたような気がして、

その途端大声で泣きながら、家までとんで帰った。

ところが、家に帰って泣きながらその奇妙なものの話をしたのに、

母は「へえ、ホンマに」とか、「怖かったねぇ」とか言うだけで、意外なほど素っ気なかった。

婆ちゃんもニコニコ笑ってるだけだし、父なんかまるで興味ないのか、新聞を読んだままだった。

弟は少し興味を持ったが、それでもホントの事だとは思ってなかったらしい。

翌日、学校でそのことを話したら、たちまち評判になって、

”妖怪 野菜首”とか”顔野菜”とかいって、ちょっとしたブームみたいになった。

だけどそれ以降、私以外にそれを見たという人は出てこず、

飽きっぽい子供の事だから、すぐに違う事に興味を移してしまった。

私自身も見間違えだったのだろうと思い、そのことすら忘れかけて数ヵ月たったある日。

突然母に言われた。

「○○ちゃん(=私)、あんた前変なん見たやろ?」

「うん、見た」

「あれな、見たこと、あんまり人に言わん方がよかったんやで」

「何で?」

「何でも。もうあんまり言わんときね?」

「・・・・」

その時はそれっきりだったが、後にその事を母に聞いてみたところ、

母親も婆ちゃんも、それを見たことがあったらしい。

だが、それが何なのか、見たことを人に言うとどうなるのか、については、

やんわり誤魔化して、決して言おうとしなかった。

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