聞きたい?

2016.12.17.Sat.16:17

これは10数年前の話だが・・・、いまだに人に話すと体調が悪くなる。

当時、高校生だったオレは、夏休みを利用して、田舎から東京へ旅行することになった。

ちょうどEXSPOなんとかって博覧会が筑波で開催されたりして、楽しい余暇をすごしたオレは、

予定よりひとつ遅れた飛行機に乗って、無事に田舎に帰ったのだが、ニュースを観て驚いた。

初めに予定した飛行機が落ちたらしい・・・。

ああ、よかったねえ、助かったよ。危なかったなあ。

そのときはそれですんだが、それから1週間後。

あの悪名高い写真週刊誌FとFDが、こぞって事故現場の写真を掲載した。

あのころのオレはまだ社会的に未成熟で、部活の帰りにそれらを手にとり、そして『笑った』。

そしてその夜・・・・。

オレは浅い夢の中で、今日あの雑誌を手にしたコンビニにいた。

友達数人と、下品な声で笑いあってる。

「げははは、ひでえなあ これ。真っ黒こげじゃん!」

「ホントひでえなあ げらげら」

「・・・・・・・・」

「酷いでしょう?・・・・」

ん?

何時の間にかオレの隣に、夏なのに帽子を深くかぶり、長いコートを着た男が立っていた。

そして、おれに蚊の泣くような声で話かけてきた。

「酷いでしょう・・・・」

「はあ・・・そうですね」

なんだコイツ?まあいいや。おいおい、この写真も酷いぜ!あはははは!

「・・・・・・」

「・・・酷いでしょう?・・・・」

え?またお前?なに?

「ああ、はいはい、酷いですよねえ」

なんだよ、馴れ馴れしいなあ。

おい、こっちの雑誌もすげえよ!なんだこりゃあ・・・わあーボロボロ・・・あはははは!

「・・・・・・・」

「・・酷い・・・でしょう・・・」

え?またかよ。そうですね、酷いですよね!

変なオヤジだなあ・・・・。

「酷いでしょう・・・・!」

なんだよしつこいなああ!

振り向いたオレに帽子とコートがはらりと落ちて、男の顔が飛び込んできた。

「酷いでしょう・・・!!!!」

うああああああ!

そこにいたのはまぎれもなく、写真週刊誌の黒焦げの男だった。

恐怖のあまりへたれこむオレの耳元で、確かめるように彼はもう一度聞いてきた。

「ひ・ど・い・でしょう?」

はっ!と目がさめたが、体が動かない!金縛りだ・・・。

時間は夜中の二時、三時頃か。

うああ・・いやだなあ。変な夢見た挙句、金縛りかよ。

でも夢でよかったよ。ああ怖かったなあ。でもこの金縛りどうしよう・・・。

心霊現象には多少の慣れもあって、そのときオレは比較的冷静だった。

そう、部屋の隅の気配に気づくまでは・・・・。

おりゃあ・・・のんきなオレは、筋力で金縛りをなんとかしようと奮戦してみたが、やっぱり動かない。

そのうち暗闇に目が慣れてきた。

・・・あれ?天井の左隅になにかいる・・・。

なんだ?黒い塊がうごめいてるぞ。

目が悪くよく見えない。眼鏡は枕もとにあるが、からだが動かない。

目に力を入れて、もう一度天井を見る。

なんだろう?あれは・・・・。もしかして・・・

そのとき、聞き覚えのある声が耳元に聞こえた。

「ひ・ど・い・でしょう・・・!!!」

うああああああああ!!!!!

ごめんなさい!すいません!なんまいだぶ!わあああああああ!!!

おれは目を閉じて必死にあやまった。あんなモノ見て笑ってはイケナイ。

死者を冒涜すのは恥べき事、なんてコトをしてしまったんだ・・・。

影はじっとコッチを見据えている。目は閉じてても気配でわかる。

気がついたら朝になってた。わあー神様ありがとう!もう二度とあんな馬鹿なコトはしません。

この後このことは思い出すと、偏頭痛になったり異常な吐き気を覚えたり、

しばらくオレを悩ませたが、それもそのうちなくなり、この話も自分自身のなかで風化していった・・・。

そして3年後・・・。

「聞きたい? 」

「ききたああい・・・!」

大学生になった俺は、バイトで小学生の塾の講師をやっていた。

ところが夏休みになると、こいつらは騒いでばかりでヒトの話を聞かない。

そういうときオレは、怖い話でやつらを黙らせた後、授業を始めるのが日課だった。

これが効果覿面。静かになること、なること。

しかし、手もちの話には限りがある。

そのとき、この話をふと思い出した。

「聞きたいか!今日のは怖いぞお・・・。先生が高校生の頃な飛行機事故が・・・」

「こわーい!」

「ひえー!こわいよなあ!」

うけた、うけた。う

それから1週間後・・・。

「おはよう!」

「おはようございます」

「なんだみんな元気ないなあ。今日は怖い話はいいのか?」

「・・・・・・・」

「ウン・・モウイイ・・・・」

「なんだ、ゴメン悪かったよ。そんなに怖かったか、この間の話?」

「・・・・・・・」

「アノネ、センセイ。モウコワイハナシヤメテ」

ありゃあ・・・。こりゃ、やりすぎたか・・・。

「センセイ、アノネ・・・」

「うん?なんだ」

「アタシ、話ヲキイタ夜ニネ・・・・」

「うん・・・?」

「先生ト同ジ夢見タヨ・・・」

「え?同じ夢って・・・」

「同ジ夢。オトコノヒト・・・ヒドイデショウ・・・アッタヨ」

「おい、おい冗談だろ?」

「ナンデアンナ話ヲシタノ!オカゲデ、ミンナ・・・!」

みんな?そのときオレは気づいた。

塾だから10数人のクラスなのだが、みんな殺意にも似た目で、オレを睨んでいることを・・・。

「みんな見ちゃったじゃない!黒焦げの男!!!」

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