おふだのいたずら

2016.12.18.Sun.11:18

私、ちょっと変わった印刷屋をやってまして、仕事でお札等を印刷することがよくあります。

(普通の印刷もやっていますが)

そのため、よく真っ新のお札を持ち歩いていたりするのですが、

ときどきホテルに泊まったときなんかに、

つい悪戯で、絵の裏とかにこっそり貼ってしまったりすることがあります。

泊まった部屋で絵をひっくり返してみて、妙に真新しいお札が貼ってあって、怖い思いした人はごめんなさいね。

ほんの出来心です。

そうした悪戯で、個人的に一番怖い思いをしたのは、

近年、人気のある温泉観光地に行ったときのことですね。

ホテルから帰ってきたすぐ次の日に、ホテルから電話がかかってきました。

どうやら悪戯がばれたらしく、

「勝手にお札が貼り付けてあるがどういうことか」と厳しく問いただされたことですね。

「いやな感じがしたので、お守りのために貼ったまま忘れてました」と適当にごまかせましたが、

さすがにああいうイメージを大切にするところは、管理を徹底しているものですね。

少しでも悪評の立つようなことがないよう、細心の注意をしています。

支配人の方の口調の豹変ぶりは、本当に恐ろしかったです。

2番目に怖かったのは、これは仕事関係で、ある地方都市のビジネスホテルに泊まったときの話です。

そこはビジネスとはいえ、観光名所にもなっている地方都市にありがちな、結構グレードの高いところで、

普通のグレードの部屋だったのですが、それでも飾ってある絵なんかもどことなく品のある、

大変に落ち着いた感じのところでした。

その日は、ちょっと商談がうまくまとまらずに、いらいらしていました。

部屋に帰って来るなり、何か悪戯してやれ、という気分で、

いつものように(笑)、額を外して、

その裏にやたら滅多に結構な枚数のお札を、ベタベタと貼り付けてしまいました。

その後、一旦、食事を取りに外に出て、部屋に戻ってからは一人で酒盛りをして寝ました。

すると寝床の中で少し気分が悪くなってきまして、どうも寝付きが悪かったのを、不思議とよく覚えています。

まあ、これは単純に酒のせいなわけですが。

で、そうこうしながら、何となく眠り込んでいたわけです。

気が付くと、暗闇の中、何か非常ベルのようなものが耳元で、

大変けたたましく鳴り響いていることが分かりました。

私は最初それが目覚まし時計かと思って、必死に止めようとしたのですが、体が重くて全然動かないのです。

そうこう悪戦苦闘しているうちに、ふと目が覚めまして、今までのが夢だったと分かったのです。

何でそんな夢を見たのか、すぐに分かりました。

枕元で電話が鳴り響いているのです。

周囲はまだ真っ暗ですし、さすがにギョッとしましたが、

取りあえず出てみようと思って受話器に手をかけた瞬間、電話は切れてしまいました。

まあ、夜中に電話が鳴っていたことは少し怖い気もしましたが、まだ眠かったですし、

モーニングコールの設定ミスか何かだろうと、気にせずまた布団に入りました。

ウトウトとしてきた頃です。

突然、ピーンポーン!と、来訪者を告げる呼び鈴の音が部屋に鳴り渡ったのです。

さすがにこれには、一度に眠気が吹き飛ばしました。

私が呆然としていると、すぐさま、ピーンポーン!ピーンポーン!と、呼び鈴が続けざまに何度も押されました。

ただ、最初は私も唖然としてしまったのですが、

すぐにドアの外で「お客様!お客様!」と呼びかけている声に気付きました。

少し安心してドアの方に行き、「今、開けます」と返事をしたところ、

呼び鈴の音は止まり、相手はドアの外で待っている様子です。

開けるかどうか、やや躊躇をしたのですが、チェーンをかけて扉を少しだけ開きました。

そこには見える範囲だけで、ホテルの従業員らしき人が3人ほど立っている様子でした。

私が不審に思い、「何でしょうか!?」と尋ねると、

彼らは申し訳なさそうに、理由も告げずに、「部屋に入らせて欲しい」と言います。

私が理由を尋ねると、ただ「不審な通報を受けたので、念のため確認したい」とだけ言います。

私は少々腹は立ちましたが、向こうにはどうやら警備員らしき人もいるようなので、

一方的に断って不審に思われるのも面倒なので、とりあえず彼らを中に入れることにしました。

彼らは私の部屋に入って、しばらく浴室等を見回した後、

非常に申し訳なさそうに確認が完了した旨とお詫びを告げ、部屋を去ろうとしました。

私は改めて先ほどの従業員に理由を尋ねたところ、次のように話してくれました。

「大変不思議なことなんですが、実は30分ほど前、お客様の部屋からフロントに電話がありまして、

 『部屋に宿泊している人間に閉じこめられてしまった』とだけ言って切れてしまったのです。

 そこで、何度かお部屋に電話したのですが、お客様が出られないようでしたので、お伺させて頂いた次第です」

私ははたして、良いことをしたのでしょうかねぇ・・・。

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