心霊スポットが出来るまで

2016.12.20.Tue.21:09

うちの地元に、ある旅館があった。 

その旅館は、いわゆる高度経済成長の時代レジャーブームに乗ってできたものだった。 

そして、80年代後半に入ると、レジャーの多様化、海外旅行ブーム、老朽化などにより、 

その旅館の経営は、少々下り坂に入ったという。 

時は、折りしもバブルの時代。その旅館と敷地は、その周辺の土地は、「開発会社」に、 

買い取られ、その旅館は、閉鎖された。 

うわさでは、長期滞在型のリゾート開発が行われ、その旅館の土地には、リゾートマンションが建設される、 

とのことだった。 

が、開発が始まる前に、バブルは崩壊。 

旅館とその周辺の土地を買いあさった「開発会社」も、倒産したとのことだった。 

見事に不良債権となった、旅館とその周辺は、誰も手をつけず、荒れ果て、 

旅館は廃墟と化していった。 

もともと、道路から、少し奥まったところに立っていたその旅館。 

営業していたときは、道路に、旅館の案内看板も立っており、道路からも、 

明かりの灯る旅館を見る事が出来たが、いまや、漆黒の闇の中、 

生い茂る草木の向こうに、廃墟と化した旅館が見えるという状況。 

今は営業時の面影もなく、闇に浮かぶ旅館には、不気味さすら感じられるようになった。 

廃墟と化し、不気味さすら漂わせるようになった為か、その頃から、その旅館にある噂が漂い始めた。 

いわゆる、「幽霊が出る」という噂である。 

曰く「オーナーが経営苦によって自殺をし、そのオーナーの霊がでる。」 

曰く「開発会社の社長が、そこで自殺をし、その社長が・・・・」 

曰く「営業していたころ、殺人事件があり・・・・・」 

もちろん、どれも、根も葉もない噂である。 

その旅館の元経営者は、下り坂になり始めた時、旅館と土地を開発会社に高値で売り、 

今でも悠々自適の生活をしているし、開発会社は、倒産したらしいが、 

社長がそこで自殺したなどという事実はない。 

殺人事件も、もちろんなかった。 

まあ、地元の廃墟と化した経緯を知っている人間が見ても、不気味さを感じるのだから、 

そういう事情を知らない、外の人が見れば、そんな作り話もできるのかもしれない。 

ただ、その廃墟と化した旅館の窓に、「青白い光を見た。」、「人影を見た。」という地元の人もいたのは事実である。 

かく言う私も、実は、旅館の窓に、「青白い光」、「人影」を見て、ドキッとしたことが、二三度あった。 

ただ、私や、地元の人たちが「青白い光」、「人影」を見はじめたのは、「幽霊が出る」という噂が立ち、 

その旅館が、肝試しスポットとなりつつあった時である。 

人影や、青白い光の正体も、幽霊等では勿論無く、大方、肝試しに訪れた人や、 

その人の持つ懐中電灯とかであろうと思ったし、地元の人も大半は、そう信じていた。 

事実、廃墟と化した旅館は、道路から見えること等とあいまって、 

「幽霊が出る旅館の廃墟」 

として、肝試しスポットとして有名になっていった。 

私は読んだ事は無いが、雑誌等にも、上記の根も葉もない、因縁話。 

そして、実際に幽霊を見たとする、目撃者の話等と一緒に、何度か取り上げられたという話である。 

そして、後は、その手の廃墟のお約束で、物見遊山気分の若者たちや、真夜中に大騒ぎする若者達が、 

集まるようになり、地元でそれが問題となり、その旅館の取り壊しが求められるようになった。 

そして、また月日が流れて、その旅館がいよいよ取り壊されることとなった。 

跡地には、複合大型ショッピングセンターができるとのことだった。 

その旅館が廃業してから、十数年、少々不気味だったとはいえ、見慣れた光景が消えることに、一抹の寂しさも覚えた。 

そして、取り壊し工事が始まって、数日後、その廃墟に、警察車両が、多数止まっているのを見た。 

「何か事故でもあったのかな?」 

家に帰って、ニュースを見て、警察車両が集まっていた理由を知った。 

その旅館の解体工事中、白骨化した遺体が見つかった。とのこと。 

死後、6年から10年が経過しているとのことだった。 

「旅館の廃墟に幽霊が出る。」という噂が立ち始めた時期と一致する。

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