ようくりげっきょはまからうん

2017.01.01.Sun.16:17

『ようくりげっきょはまからうん』という言葉をご存知ですか? 

恐らく知らないでしょう。これは恐山に伝わる、呪いを抜く為の言葉です。 

イタコ達は降霊と呼ばれる儀式を行い、霊界からのメッセージを現世の人に伝えます。 

ですが、当然お分かりでしょうが、9割以上がインチキです。 

昔は組織的な連携と掟がありましたが、長を世襲していた名代が根絶してからは無法地帯となり、 怪しげな宗教や、インチキ占い師の行きつく場所となってしまいました。 

ですが依然として、他に身の置き所がない本当の霊能力者達や、自分自身の力を生かさんが為、または、悪影響をおよばさないため、山に篭る人たちは多くはありませんが、5年に1人くらいの割合で今だにいらっしゃいます。

この話は聞かれる方も、当然強くなければ、何かしらの悪影響がでるかもしれません。 

興味本位や、霊感が強い、もしくは自意識過剰な方も、読むのはお控え下さい。 

これは、あるイタコの告白であると同時に、私の懺悔です。読む前に口になさって下さい。 

背筋を伸ばして座禅か楽な姿勢をとり、手を合わせ半眼の状態になる。 

目線は自分の前2メートルほど先の地面。

『ようくりげっきょはまからうん』

夏でした。暑い日でした。

私は山篭りしてますけ、頼るものおらん。 

子供のころっけ、家さいたら、父と母と姉のほかに、一緒に飯くうさる者がおる。 

わしは、その黒い人が一緒になって飯くうとる姿を、じーとみとった。 

父ははまがさりじゃきゅーて、飯そそのかしとるわしを、手のばして叩きおった。 

しから、黒い人が手ばのばしけ、父の首を触った。

父は昏倒して、十日ばかり目覚めンかったよ。 

黒い影をよう見たら二つの目があるけ、よーく見たら、その目が苦しそうな顔じゃった。 

丸い白い顔が、おびえたようにワシをみとった。 

遠目にはそれが白い小さな目のように、暗い顔に二つならんどる。 

そんなものがよく見えるようになった。 

小学校さばいくとさ、友達の頭が二つある。

ひとつはわろーとるがしゃ、もうひとつの顔が横にずれてはみ出して、死にそうな顔しとるけ。 

こりゃあかんーいうて、そのこつれて衛生室へつれていきました。 

先生に叱られてばかりじゃった……。 

しばらくぶりに学校いくと、その子がおらん。病院へいきました。 

そこではそのこが辛そうにおるけん、泣いてみちゅうが、

はみ出したもう一つの顔は、もう死んどったけんが、もうあかんちゅうてほろほろ泣きました。 

したらば先生もないちょった。

その子はその年の秋頃しにました。 

こげな見えるのが自分だけやと知りうるが、女学生のころで部屋を借りました。 

部屋は綺麗でしたが、真中に女性の右足だけが立ってました。 

足の上の部分は黒くかげってて、見えませんでした。 

私は恐かったけども、贅沢はいえんものですから、その右足には近づかないゆーにしときました。

大抵がそれでよかので。 

ですがある日、風呂こ入って髪を湯船につけてたら何かおかしく、気がつけば髪がまっすぐ湯船にはいってる。 

その先に、わしの知らん女子のふやけて腐った顔が、私と睨んで沈んでて、

髪がお湯の中で、そのまま私の髪と繋がってる。 

白目の無い真っ黒の目でした。 

わしは次の日には髪切りました。 

そごな事がほんち多くて、多くて、泣けるごとしてましたから、回りは心配します。 

そごで、ある高名なイタコさんが物見遊山で来てましたけ、親戚が頼んで見てもらいました。 

したらば、そのイタコさん腰ぬかして言いました。 

「あんたは死んだまま生まれとるけ、霊ばひきよせる」 

それで山篭るしかないちゅーて、連れてかれました。 

かなしゅーて、かなしゅーて、かなしゅーて・・・

どがして私に見えるがげん、こげな山こもらなあかんのって、ずっと思いました。 

悔しくて、悔しくて。

山さで修行ばさせられるとが、痛くて泣いてばかりでした。 

あと寂しかった。親も友達も何度か来てくれましたけ、その度うれしかとやけど、

その度に親も友達も、背中にボロキレに身をつつんだ老婆や老人、

埋められたのじゃろ、ぐちゃぐちゃにつぶれちる男なんかが必死にしがみついちゅぅ。 

このままじゃこの山の餌食なりますけ、師匠とも話して、私のとこへこんがいいとしました。 

泣いて泣いて。寂しかったけど、これも修行じゃー修行じゃーって我慢してました。 

遊びたかった。遊びたかった。

ほとんど遊んだ事ありませんけ、遊びたかった。

修行は基本的に断食ですけら、いつも腹すかせとりますが、

霊力は高めるがごとくあるがに、色んな者が見えるようになりました。 

一番弟子となりました。

わしはじゃからいろんな霊を見て、交霊して、沢山の悲しみ苦しみ怒り嘆き、刻みました。 

殺された霊の苦しさはたまらないけ。

一度なんかは、殺した男が殺された女性の降霊を頼みましたけ、山につれていって穴に埋めました。 

山は私がおさめとったけ、村人さ使ってそげな事ばするようになってけ、

この両の手おってもいえんくらい人を殺めました。 

埋めて殺すとじーっとみとりますと、土の中からやがて顔がすぅっと出てきます。 

首から上だけが苦しみに歪んだ顔でつきでとりますけ、

私はそれをとどめまして、顔を潰す為に置き石を打ちつけます。 

すれば永遠に、霊体のまま頭を潰された苦しみを味わうわけです。 

霊体が潰された石の下でうごめくのは、虫の潰されたようにみえますけ、わしはいつもそれを見て笑うりました。 

それをさすがために恐山では、いつしかわしの真似して、石を積んでいる場所が増えました。 

わしはそれを見て、石の下を見ます。 

たまに潰されてる顔がありますけ、わし以外にも見えるものがおったのじゃけ、うらしまへん。 

わしはそが悪行をゆるせんちゅう、若いイタコがおりました。 

わしはそげな掟を守れんがごと言うのが腹立たしくありましたけ、

村の男にたのんで、その後に石を沢山のせて埋めました。 

しからが、そのおなごが力が死んでからすごくて、わしが石をおこうにも石をおかせん。

わしは自分のこうべに、そのおなごの指がはいったのをしりました。 

憎いことに、その指がわしの頭の骸骨の内側を掻く。がりりがりりと。 

わしは痛くて痛くて、痛くて痛くて・・・

わしもうちの目で見たら、その指が薬指で指輪がはまっておりましたけ、

このおなごも霊力があるがために、家庭を捨てて身を清めに来たことと知りました。 

わしは10人の命をつかって除霊をしましたが無理でした。 

悔しいのほんとに。なんでわしがこげな事で命をおとすがじゃと、

くるもん、くるもんに気付かれんように、呪いをかけてかけてかけて・・・

死ぬまでわしはかけつづけました。 

ですが、この女の呪いにはかてん。 

わしは98歳で死なんといかんかった。 

でも死んでもまだ痛い、痛い、痛い・・・

助けてくだしゃれ、助けてくだしゃれ、この痛み・・・ 

たすけて、呪い呪わぶぬしが身代わり。

わしのこの痛みをとってくだしゃれ。 

私はイタコに、以上のことを話してもらいました。 

その女性は恐山では最高の力を持ってますから、この呪いはきかないとの事でした。 

その女性が指に錆びた指輪をしてたので伺うと、

やはり、埋められて腐敗してた骨とともに出てきたので、供養の為に身につけているとの事でした。 

詳しい時期は聞き出せませんでしたが、おそらく戦前にいたイタコだということです。 

(長だったはずなので、個人名まで本当は知っているはずです) 

私はその場でお払いをしてもらいました。(最初にお伝えしたものです) 

ですが、生々しい、死んでも苦しみ続ける地縛霊の声を聞いたとき、

ああいう声が街のあちこちにも満ちていると説明をうけ、

私はその取材終えました。 

後日、その現場に居合わせた友人が死にましたが、その件に関しては恐山には行ってません。 

お払いをうけさせる前に、用事で先に帰るよう指示を出したのは私でした。 

頭痛を苦にしての自殺でした。 

関係ないとは思います。

私はお払いをしてもらってましたし。

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