双子塚

2017.01.17.Tue.16:12

無人の改札口を抜け 駅から出て来た吉田は途方にくれた。

寂れた田舎町だとは聞いたが これほど何もない所だとは・・・

最終の下り列車に間に合ったのはいいのだが この先の交通手段がない。

どうしたものかと辺りを見渡すと 古い朽ち果てそうな建物にタクシー会社の看板が貼り付けてあった。

書かれていた番号に電話してみると2~30分程かかると言われたが仕方なく待つしかなかった。

吉田はその古い建物の近くにあった石に腰かけ 煙草に火をつけた。

フリーのルポライターである吉田は 地方の変わった習慣やしきたりなどを編集しながら旅をしていた。

この村へやってきたのは ここでは昔から双子の生まれる確率が非常に高いと言う噂を聞いて 好奇心からそそられたからだ。

間もなく 暗闇から一台のタクシーがやってきた。

2~30分と言うわりにはやけに早い到着だ。

不愛想な若い運転手が無言でドアを開ける。

「いやー 助かったよ。 とにかく一番近い旅館までお願いします。」

吉田は旅先でタクシーに乗ったときは 運転手と話をするようにしている。

思いがけない情報を入手できる事があるからだ。

だがこの運転手は何を聞いても 無言で頷くだけ。

ところが この村になぜ双子が多いのかと言う話になると 急に人が変わったように饒舌になった。

「ここは 呪われている村なんですよ・・・。」

運転手はこんな話を始めた。

昔 この村に男女の双子が生まれたが その当時双子は縁起が悪いと忌み嫌われて 妹である女の子を里子に出したと言う。

ところがどうした事か 成人した二人はそんな過去があった事は露ほども知らず 愛し合う仲になってしまったと言う。

その後 本当は双子なんだと言う事をわかっても 離れる事は出来なかった。

なぜなら 妹はすでに妊娠いていたのである。

だが この二人の行為は迷信深い村人達の怒りと恐れをかってしまった。

今に 村に災いがもたらすと信じ込んだ村人は 二人が隠れ住んでいた小屋に火を放ち 焼き殺してしまったのだと言うのだ。

「その呪いが 今でも続いているんですよ。 双子と言っても男女の双子が殆どですからね。その子たちは 昔この村で行われた悪行を 今の人々に思い出させるために 生まれてくるのです。」

吉田はしらけきった様子で聞いていた。

「民話としちゃ 面白いとは思うけど 双子が生まれるからには 何かもっとこう 現実的な根拠があるんじゃないの?」

運転手は興奮した様子で言い返してきた。

「・・・呪いなんだ‼」

「あのねえ 君」

「着きましたよ」

吉田はタクシーを降り 辺りを見渡し仰天した。

「な なんだ‼  また駅に戻ってきてるじゃないか‼」

訳が分からなかった。

腕時計を見ると 約30分程タクシーに乗っていたようだ。

・・・と その時 またタクシーがやってきた。

先程の運転手が引き返して来たのかと思い

「おい 君 一体どう言うつもりなん・・・」

違う 運転手は初老の男だ。

「どうも すみません お待たせしました。」

「いや さっき 一台来たんだけどそれが・・・」

「そんなはずはありませんよ ここに迎えに来たのは私だけですよ。」

「え~っ。 じゃあさっきのタクシーは・・・」

 そう言いかけた吉田は タクシーのヘッドライトが先程まで自分が腰かけていた石を照らしているのに気が付いた。

よく見ると 石だと思っていたが何かの塚のようだった。

「あの石 何ですか?」

「ああ あれは双子塚ですよ。昔双子の兄弟で夫婦になった二人が 村人に焼き殺された場所だそうですよ。あんまり僕も詳しくは知りませんけど。」

吉田は背筋が寒くなった。

翌日 吉田は村の公民館で郷土資料を調べてみると 焼き殺された双子の記述を見つけた。

それによると 双子の兄は馬子をしていたらしい。

馬子とは 馬をひいて人や荷物の運送を商売にしていた人である。

吉田は 帰りがけに双子塚の前に立ってみた。

すると その横を明らかに双子であろう男女の子供達二組が手をつないで歩いていった。

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