村はずれの小屋

2017.02.12.Sun.11:06

じっちゃま(J)に聞いた話。 

昔Jが住んでいた村に、頭のおかしな婆さん(仮名・梅)が居た。 

一緒に住んでいた息子夫婦は、新築した家に引っ越したのだが、

梅は「生まれ故郷を離れたく無い」と村に残った。

しかし他の村民の話では、「足手まといなので置いて行かれた」そうだ。 

その頃から梅は狂いはじめた。

普通に話しをしているかと思うと、いきなり飛びかかり腕に噛み付く。腕の肉が削り取られる程に。 

そんな事が何度かあると、

「ありゃあ、人の肉を食ろうておるんじゃなかろうか」と、村中で噂が広まった。

まだ子供だったJは、「なぜ警察に言わんのね?」と言うが、

「村からキチ○イが出るのは、村の恥になる」と大人は言い、

逆に梅の存在を、外部から隠すそぶりさえあったという。

風呂にも入らず髪の毛ボサボサ、裸足で徘徊する梅は、常に悪臭を放ち、日に日に人間離れしていった。 

村民は常に鎌等を持ち歩き、梅が近付くと「それ以上近寄と鎌で切るぞ」と追い払う。

そんなある日、2、3人で遊んでいた子供達が梅に襲われ、その内の1人は小指を持っていかれた。 

襲われた子の父母は激怒。梅の家に行き、棒で何度も殴りつけた。止める者は誰1人いなかったという。

「あの野郎、家の子の指をうまそうにしゃぶってやがった」

遂に梅は、村はずれの小屋に隔離されてしまう。

小屋の回りはロープや鉄線でグルグルに巻かれ、扉には頑丈な鍵。

食事は日に1回小屋の中に投げ込まれ、便所は垂れ流し。

「死んだら小屋ごと燃やしてしまえばええ」

それが大人達の結論であった。 

無論子供達には、「あそこに近付いたらいかん」と接触を避けたが、

Jはある時、親と一緒に食事を持って行った。

小屋に近付くと凄まじい悪臭。中からはクチャクチャと音がする。 

「ちっ、忌々しい。まーた糞を食うてやがる」

小屋にある小さな窓から、おにぎり等が入った包みを投げ入れる。

「さ、行こか」と、小屋に背を向けて歩き出すと、

背後から「人でなしがぁ、人でなしがぁ」と声が聞こえた。 

それから数日後、Jの友人からこう言われた。

「おい、知っとるか。あの鬼婆な、自分の体を食うとるらしいぞ」

その友人は、親が話しているのをコッソリ聞いたらしい。 

今では、左腕と右足が無くなっている状態だそうだ。

ある日、その友人とコッソリ例の小屋に行った。

しかし、中から聞こえる「ヴ~、ヴ~」との声にビビリ、逃げ帰った。 

「ありゃあ、人の味に魅入られてしもうとる。あの姿は人間では無い。物の怪だ」

親が近所の人と話しているのを聞いた。

詳しい事を親に聞くのだが、「子供は知らんでええ」と何も教えてくれない。

ある夜に大人達がJの家にやってきて、何やら話し込んでいる。

親と一緒に来た友人は、「きっと鬼婆の事を話しておるんじゃ」。

2人でコッソリと1階に降りて聞き耳を立てるが、何を言っているのかよくわからない。

だた、何度も「もう十分じゃろ」と話しているのが聞こえた。

次の日の朝。

朝食時に、「J、今日は家から出たらいかん」と父が言うので、「何かあるんか?」と聞くと、

「神様をまつる儀式があるで、それは子供に見られてはいかんのじゃ」と説明した。

しかたなく2階から外を眺めていると、例の小屋の方から煙りがあがっているではないか。

「お父、大変じゃ!鬼婆の小屋辺りから、煙りが出ておるぞ」

しかし父親は、「あれは畑を燃やしておるんじゃ。下らん事気にせんと勉強せい!」と、逆に怒られた。 

それから数日は、相変わらず小屋に近付く事は禁止されていた。

しかし、ある日友人とコッソリ見に行くと、小屋があった場所には何も無かったそうだ。 

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