奇妙な写真

2017.03.12.Sun.11:38

「何なんだ一体 この女は・・・。」

時田の写真には 決まって一人の中年女が写っているのであった。

一枚 一枚を取ってみれば何の不思議でもない平凡な写真にすぎないのだが それらの奇妙な写真を並べて見ると 初めてその女が同一人物であることに気がついたのだ。

時田がそのことに気が付いたのは高校を卒業して間もなくの頃だ。

休日のある日 今まで撮った写真を整理していると数枚の奇妙な写真の存在に一瞬にして背筋が凍くのであった。

小学校の運動会。家族で弁当を食べている背後に地面にしゃがみ込んで彼に憎々しげな眼差しを向けている。

中学校の修学旅行では 有名なお寺の物陰でやはり陰気で毒々しげな表情で彼を見つめている。

極めつけは高校の卒業式でのスナップだ。

醜い鬼女を思わせるような 般若面した中年女が相変わらず彼を睨みつけているのであった。

時田はそれらの写真の事は決して誰にも話さなかったが 折に触れあの女の事は頭から離れなかった。

その後就職し 何年かが過ぎた。

時田はそれまで写真に写る事を極力避けてきたのだが先頃 撮影されたばかりの社員旅行のスナップ写真を見て驚愕した。                           桜の木をバックに同僚数名で撮った写真なのだが 顔半分は木の陰に隠れているのだが あの女が写っているのだ。

そして時田はその女の正体を悟ったのであった。

それは その社員旅行の直前 社を去っていったOLだ。

ひととき不倫を重ね 最後はぼろ雑巾のように捨てた女。

二人が顔を合わせていた頃のやさしい眼差しと 写真でのあの恐ろしげな表情があまりにも違っていたため 気がつかなかった。

「あなただけを 今までずっと見つめてきたのよ。」

「あなたをずっとずっと 忘れないわ。」

「あなたに これからもずっとずっと付きまとってやるわ。」

去りゆく時田の背に向かって 彼女はそう言った。

しかし時田は振り向くことは・・・ なかった。

そして それが彼女との最後だった。

興信所に彼女の消息を依頼して知りえた事は 二人が別れた後自殺を試みるも死にきれず今では重い後遺障害で精神病院に入院中である事だ。

時田は思った。 生まれてから今まで いや これからも一生 炎のような憎悪を向けられ続ける事を。

また 初めてあの女と出会った時 何故か心が魅かれたのは あの写真の女と同一人物であると言う事に心の何処かで 気ついていたのではなかろうか・・・と。

 

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